進化生物学者は100年以上にわたり、人間の足の精巧さに見とれてきた。人間が無理なく直立歩行できるのも、足がもつ特徴のおかげだ。例えば、足の指が短いことで、人間は長い距離を走ることができる。
さらに最近の研究で、足の甲を形作る横方向のアーチがヒトの運動性に大きな役割を果たしていると判明、2月26日付けで学術誌「ネイチャー」に論文が発表された。この発見により、足の進化について生体力学的な研究が進むだろうと専門家は言う。また、より高精度なロボットや義足の開発につながる可能性があるうえ、整形外科的な治療や、靴の設計の改良にも役立つかもしれない。
「足根骨横足弓(そっこんこつおうそくきゅう)」という足の甲の横アーチは、これまであまり注目されてこなかった。だが、今回の論文を発表した研究者らによると、現生人類では、足の剛性の40%以上が、この横アーチによるものだという。
足の裏には、「内側縦足弓(ないそくじゅうそくきゅう)」という、「土踏まず」を形成する縦方向のアーチがあることはよく知られている。足の甲の横アーチは、この足の裏の縦アーチと連携し、人間特有の足の剛性を生み出している。そのおかげで、人間は倒れることなく体を前に蹴り出すことができる。他の霊長類が、木の枝をつかむためにより柔軟性のある足を必要とするのと対照的だ。(参考記事:「“ルーシー”の足には土踏まずがあった」)
「横アーチの効果には驚きました」と論文の著者である米エール大学の機械工学・材料科学科の助教授マドゥスダン・ベンカデサン氏は話す。「足の形が剛性にどう関係するかについて大きな議論がありましたが、これまでは内側縦足弓(縦アーチ)ばかりが注目されていました」(参考記事:「【動画】まるで着ぐるみ、器用に立って歩くゴリラ」)
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