JR西日本が、運転士のサングラス着用を始めた。強い日差しや乱反射から目を守るのが目的。運転士たちの評判も上々で、3月にも全路線で本格導入する。見た目が怖いイメージもあるサングラスだが、全国の鉄道会社に先駆けて導入した背景には、脱線事故の教訓があった。(古田寛也)
【写真】JR西日本の在来線の運転士が着用するサングラス。眼鏡の上から着用できるタイプ(下)もある(JR西日本提供)
神戸線(大阪―姫路)を運転した経験のある男性運転士(31)は、夕方に姫路方面に向かう列車が苦手だった。強い西日が目に入り、信号の色や、人や障害物の有無を確認しづらかったからだ。
JR西は昨年9月から、近畿エリアの在来線を対象に、サングラス試験着用の希望者を募った。手を挙げた75人の中に、この男性もいた。社内の調査に「体も疲れにくくなった気がする」と話したという。他の74人もほとんどが同様の感想を述べたといい、全路線で採用する準備を進めている。
JR西は運転士のサングラス着用を「乗客に威圧感を与える」として禁じてきた。そもそも国土交通省は、信号灯などの色みが変わってしまうため、着用を原則認めていない。
なぜJR西は解禁に踏み切ったのか。JR西運転士課の金丸直史課長は「わずかな『事故の芽』も摘むこと。それが安全には大切ということを脱線事故から学びました」と説明する。
2005年の宝塚線(福知山線)脱線事故で歴代社長が業務上過失致死傷罪に問われた裁判の判決で、神戸地裁は「現場カーブ手前に自動列車停止装置(ATS)を設置していれば事故を防ぐことができた」などと指摘。JR西が設置した有識者や遺族による「安全フォローアップ会議」の報告書では、「経営の効率化を重視して安全に対する感度が低かった」などと企業風土を批判した。JR西は、事故が起こる前に安全対策を講じるよう経営方針を改めた。
サングラスの導入もこの延長線にある。脱線事故前から「直射日光がまぶしくてブレーキが遅れそうになった」などの報告が上がっていたが、運転台に備え付けの日差しよけ(サンバイザー)の形や位置を変える対応にとどまっていた。
JR西は国の規定をクリアするために、本来の色を変えずに余分な光だけをカットできる特許を取得した「タレックス」(大阪市)製のサングラスを探し出して採用した。
それでも、乗客からは「いかつい形(のサングラス)ですね」と指摘されるなど課題もある。JR西は「安全運行に必要な時だけ利用するよう徹底する」としている。
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February 02, 2020 at 02:32PM
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