世界的な新型コロナウイルスの感染拡大が、新潟県の長岡市錦鯉(にしきごい)養殖組合を直撃している。3月上旬から輸出がストップし、既に買い付けが成立していたニシキゴイも飛行機が飛ばず送れない状態だ。また、海外バイヤーも来日できず春需要がゼロとなり、組合員らは収入が途絶え、苦境に追い込まれている。
膨らむ維持費…再開までしのぐ
同組合は、ニシキゴイ発祥の地として組合員160人が、海外8割、国内2割で取引している。東南アジア、欧州など約60カ国のバイヤーや愛好家を相手に信頼を深め、売り上げは推定数十億円に上る。 行き場を失ったコイは、いけすで飼育し続けるため、餌代、電気代の負担がのしかかる。一方、相手国バイヤーからは「輸出が再開されればすぐに送ってほしい」との声も届き、契約は続いている。 こうした状況でも「泳ぐ宝石」「芸術品」といわれる、より良いニシキゴイを求めて、産地では交配・産卵、ふ化の最盛期を迎えている。組合の理事長で宮寅養鯉(ようり)場代表の宮克則さん(59)は、ニシキゴイ歴42年。家族、従業員3人で経営する。宮理事長は「3月に南アフリカに向けて出荷したが、国内の空港で戻ってきた」と話す。
夏の出荷へ 資材準備も
同市のニシキゴイ産地は、2004年の新潟県中越地震で被災し、09年のリーマン・ショックでは売り上げ激減も経験した。しかし今回は影響が長期化し、先が見えない不安があるという。同組合は今後、家庭の水槽でニシキゴイを飼ってもらうなど、国内需要を喚起する取り組みや、品評会の在り方などを検討していく考えだ。 宮理事長は「組合員一丸となって難局を乗り越えていきたい。日本を代表するクールジャパンブランドに、誇りを持って生産し続けていきたい」と力を込める。 同市錦鯉ブランド室の戸田幸正室長は「夏場の輸出を想定し、包装資材、保冷などの流通環境を最適にしてサポートしたい」と述べる。
全日本錦鯉振興会の平沢久司理事長の話
ニシキゴイの販売時期は10~4月が主力。3月半ばから4月は新型コロナウイルスの影響で、厳しい状況だった。10月以降、コロナ禍が終息しなければ、さらに深刻な状況になる恐れがあり、危機感を抱いている。 ニシキゴイは山里の地で生まれ、200年の歴史がある。もともとは黒い真鯉だったが、赤やまだらなどの色付きの鯉が生まれ、先人たちがずっと守り続けてきた。先人たちの思いと努力、技術を受け継ぎ、地域独特の文化になった。新潟で生まれたニシキゴイは世界に誇れる文化となり、鑑賞魚の王様とも言われる。守りつないでいく使命がある。
直近15年で輸出量倍増
水産庁によると、ニシキゴイ養殖に取り組むのは最新の統計である2018年で、全国で536経営体。62%が新潟で、小千谷市や長岡市が産地だ。新潟を発祥に広がった山間地の産業は、広島(24経営体)、岐阜(18経営体)、福岡(17経営体)など全国に広がる。 2004年の新潟県中越地震で発祥の地である新潟県長岡市の山古志地区や小千谷市が甚大な被害に遭ったものの、産地を守り続けている。 輸出量は年々増加傾向にある。この15年間で2倍近く増やしている。日本の文化の象徴として、香港やオランダ、米国などで特に人気が高い。中には、1尾2000万円もの値が付くものもある。
日本農業新聞
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June 11, 2020 at 05:05AM
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