朝日小学生新聞の人気連載「ファーブル先生の昆虫教室」が、1冊の本になりました! たのしいイラストとやさしい文章で、ファーブル先生が昆虫たちのおもしろい生態を教えてくれます。昆虫たちの奥深い世界に、大人も好奇心をくすぐられる児童書です。
スカラベ⑨ 宝石のようなさなぎ
暑い夏が来ると、スカラベの幼虫が入ったセイヨウナシ形の玉は、外側がカチカチに固くなる。でも幼虫は、玉の中のやわらかい部分を食べて、皮をぬぎ、無事さなぎになっている。
さなぎはまるで宝石のトパーズみたいに、とても美しい黄色なんだ。胸で手を組んでいるところは、まるでひつぎに入ったミイラのよう。
9月になって雨が降ると、牧場では、ナシ玉の入っている地下室に雨がしみこんできて、カチカチだったナシ玉のからがしめってやわらかくなる。
そのころ中のスカラベは、さなぎの皮をぬいで、もう成虫になっている。若い成虫は背中にえいっと力を入れ、ナシ玉のからをべりべりっとやぶって外に出てくるんだ。
ためしに私が、このかわいたナシ玉に水をやらないでそのままにしておくと、中でさなぎから成虫に羽化したスカラベは、かたいからをカリカリむなしくつめでひっかくだけで、外に出ることができず、死んでしまった。
スカラベの仲間は北アフリカのエジプトにもたくさんいるよ。エジプトで、スカラベが羽化してくる時期を考えてみよう。それは、ちょうど、ナイル川のはんらんの時期にあたるんだね。
川の水があふれてまわりの地面にしみこむと、フランスの9月の雨と同じように、地下のナシ玉のからがしめってやわらかくなり、新しいスカラベが地上に出てくることになる。
それを見て、古代エジプトの人びとは、一度土の中に入って死んだスカラベが、生まれ変わって出てくるのだと信じたんだ。
そのために、スカラベを「死と再生」のシンボルとして、宝石をきざんでその形を作り、ミイラの胸の上に置いていたんだ。ツタンカーメン王の墓からも、豪華な、すばらしい宝石細工のスカラベが出てきているよ。
古代エジプトでは、いろいろなものが神様として信仰の対象になった。イヌもネコもハゲワシも神様だ。
スカラベは「ケプリ神」といって、毎日太陽の玉を東から西まで転がしていく神様の化身だと信じられていたんだよ。
text : Daisaburo Okumoto
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July 07, 2020 at 03:52PM
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すくすく育った幼虫が、ふんの中で宝石に。美しいスカラベのさなぎ/ファーブル先生の昆虫教室⑤ - ダ・ヴィンチニュース
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