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Sunday, August 16, 2020

さるぼぼ元祖は胴長 時代とともに形変化 - 岐阜新聞

◆ルーツは室町時代

 飛騨地域の民芸品の一つ「さるぼぼ」は、多くの岐阜県民が目にしたことがあるだろう。土産物として根強い人気があり、有名アニメや地元にゆかりのあるスポーツ選手とのコラボレーション商品も出回るほどだ。赤い色や形がかわいい人形のルーツはかなり古く、室町時代にさかのぼる。なぜそれほどの歴史があるのか。古い文化を大切にする、飛騨ならではの風土が背景にある。

 さるぼぼは飛騨の方言で、サルの赤ちゃんという意味。腹掛けと頭巾を着けた人形で、女の子の良縁や安産を願って作り与える風習があった。現在土産物店には、赤だけでなくカラフルな人形の他に、ドラえもん、名探偵コナンをはじめとするアニメや、飛騨出身のプロ野球ドラゴンズの根尾昂、垣越建伸両選手とコラボした品もある。高山市内で土産物店を営む男性(85)によると、店頭に並んだのは50年ほど前。「仕入れ先に覚えはないが、地元の個人が作った物だった。面白いからと売り始めたものの、当初は『目鼻がない』と気味悪がられた」と振り返る。

◆「胴は小さい方がかわいい」

 さるぼぼの製造業者などでつくる「飛騨のさるぼぼ製造協同組合」理事で、愛和工芸(同市本母町)会長の森林三樹夫さん(71)は20代の頃、市内の土産物店に勤めていた。その店は三つの事業者から仕入れており、当時は胴の長い姿だったという。店を退職後に同社の前身を立ち上げ、和紙の人形製造・販売を手掛けた。さるぼぼが人気になると見込み、1980年代初めに製造に乗り出した。人気キャラクター「ハローキティ」から着想を得て「頭でっかちで、胴は小さい方がかわいい」と胴を短くした。さらに飛騨に代表的なキャラクターがなかったため、さるぼぼのイラストを載せたキーホルダーやタオルなどを作りだした。森林さんは「広まったのは、キャラ化も一つの要因だろう」と話す。

◆赤ちゃんの厄除よけ→おもちゃ

 土産物としての地位を確立したさるぼぼの起源は、一体何なのか。高山市教育委員会市史編さん室の田中彰さん(69)によると、室町時代にあった「天児(あまがつ)」の流れをくむのだという。天児は竹筒を丁字に組み合わせ、上に丸い首を乗せた人形。公家や上級武家の出産時のしつらえに必要な物で、赤ちゃんのそばに置き災いが乗り移らないようにした。さるぼぼとは似つかない形だが、天児の風習は江戸時代に庶民へ伝わり、同じ役割を持つ人形「這子(はうこ)」が登場、飛騨にも広まった。田中さんは「形がさるぼぼと似ており、元祖だろう」とみる。

 しかし這子は時代を経るにつれ、おもちゃとしての役割が強まった。明治になると、東京では消えてしまったという。一方明治生まれで、高山市出身の田中さんの親族は、女の子のお守りとして胴長のさるぼぼを作っていた。飛騨には人形と、子どもを厄から守る考え方が残った。ただどう伝わり、なぜ残ったのかは分からない。田中さんは「飛騨は入ってきた文化がとどまり、発展する場所。さるぼぼもそうした土地柄を象徴する一つだが、飛騨のブランドにまでなったのは不思議だ」と驚く。

 土産物店に並ぶかわいらしいさるぼぼ。その姿には長い歴史と飛騨人の思いが込められている。


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August 17, 2020 at 06:47AM
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