大晦日にTKOで防衛に成功したWBO世界スーパーフライ級王者、井岡一翔(31、Ambition)の左腕のタトゥーが露出していた問題に関してJBC(日本ボクシングコミッション)が処分を下す方針を固めたことが5日、明らかになった。JBCルールでは「入れ墨など観客に不快の念を与える風体の者」は試合に出場できないことになっており、そのルールに抵触したもの。週明けにも倫理委員会が開かれ処分内容が決定する。ただ井岡陣営は、試合前に「タトゥー」を隠す措置は取っており意図的ではなかったことからライセンス剥奪のような“厳罰”には至らないものと見られている。
JBCルール違反と井岡陣営の不手際
これも大晦日に視聴率を10.3%稼いだ試合ゆえの波紋なのだろうか。井岡は大晦日に東京・大田区総合体育館で行われた、3階級制覇王者で前WBO世界フライ級王者の田中恒成(25、畑中)とのタイトルマッチで、「格の違いを見せる」という戦前の言葉通りに攻守において最上級のテクニックを見せつけ8回1分35秒TKOで破り2度目の防衛に成功した。無敗の田中を左フックで2度キャンバスに這わせるという完璧な内容のボクシングで、世界的評価も高まったが、試合を統括するJBCは、試合中に左腕に彫られたタトゥーが露出していたことを問題視していた。 JBCルールでは第5章「試合の管理」第4節「試合出場ボクサー」の第86条(欠格事由) で試合に出場することができない事項を定めており、その(2)に「入れ墨など観客に不快の念を与える風体の者」とあり、本来は、入れ墨のあるボクサーは試合に出場ができない。 過去には、川崎タツキ氏などプロライセンスを取るためレーザー手術、皮膚の移植手術をしてまで入れ墨を消してリングに上がったボクサーもいた。現在は、「不快の念を与えない」ようにファンデーションやパウダーなどで「入れ墨」「タトゥー」を隠す措置をした場合には試合出場が認められることになっていて、実際、井岡陣営も、今回、「隠す措置」を行ったが、そこに不備、不手際があった。 実は、筆者は試合前、井岡陣営の幹部にタトゥーの措置について確認取材をしていた。新型コロナ禍で1年間、試合がない間に井岡の左上腕部だけにあったタトゥーが左の肩のあたりまで広がり、左脇腹には1歳4か月になる長男の名前も彫っていた。陣営幹部は、筆者に「JBCルールに従ってファンデーションなどを使ってタトゥー部分を隠してリングに上がります」と明言。実際、試合前の控え室で、ファンデーションが塗られていたという。 JBCも試合前日に井岡陣営に「これまで同様、ルールに従いタトゥーはしっかりと隠して下さい」と指導。試合前の控室でバンテージ、グローブチェックをする際にもファンデーションをタトゥーの上に塗っていることを確認していた。 だが、「これまでよりも塗りが薄かったのかもしれない。アップの段階ですでに汗で流れたのか、試合開始前にあれ?と思ったが、試合が始まると、どんどんそれが取れてハッキリとタトゥーが見える形になっていた」(JBC関係者)という。
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