大みそかにWBO世界スーパー・フライ級王座の2度目の防衛を成功させた井岡一翔(Ambition)。若くして3階級制覇を成し遂げた挑戦者、田中恒成(畑中)を完全に封じて8回TKO勝ちした試合は見事の一言に尽きたが、試合が終わって意外な形で脚光を浴びることになった。井岡が左腕に大きく入れたタトゥーがはっきり見えていたことが議論を巻き起こしているのだ。
国内のプロボクシングを統括する日本ボクシングコミッション(JBC)は「入れ墨など観客に不快の念を与える風体の者」は「試合に出場することができない」というルール(第86条)を定めている。これは入れ墨をしている人間が試合をできないという意味ではなく、入れ墨をしている選手はファンデーションなどを使って入れ墨を“消して”リングに上がるべし―─という意味である。
タトゥーと呼ばれる1つのファッションに?
このようなルールが存在するのはボクシングという競技の特性、歴史と大いに関係している。ボクシングはその昔、暴力団関係者とのかかわりが少なからずあり、リングサイドにその筋の人たちがズラリと並んだような時代もあった。だからボクシング界は「野蛮」、「ダーティー」というイメージを払拭しようと何十年もかけて努力してきた。そうした歴史の中でこのルールが存在しているということをまず押さえておきたい。
とはいえ時代は変わり、入れ墨=反社会勢力という式が必ずしも成り立たない時代になりつつある。入れ墨はいまやタトゥーと呼ばれる1つのファッションだ。だからこそ、今回の件をめぐって「そもそもこんな古臭いルールがあるのはおかしい」、「なぜ入れ墨を消さなければいけないのか」といったルールそのものを批判する声がたくさん上がったのだろう。
逆に「JBCはもっと厳しく取り締まるべし」という反対の意見も少なからずある。おそらく白か黒かはっきりした意見を持っている人よりも「う~ん、難しいなあ」と感じている人が多いのではないだろうか。
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