「卒業した三年生を中心に定期演奏会への思いが強かった。最後の曲『スターズ』演奏後は、思いがあふれた」。浜松聖星高吹奏楽部三年の森下青葉さん(18)と森川花帆(かほ)さん(17)は、二月に開催された二十四回目の定期演奏会を振り返る。
同部は三月に開催された全日本高校選抜吹奏楽大会でグランプリとなる浜松市長賞を獲得するなど、吹奏楽の強豪校として知られる。「強くなるためには定期演奏会が必要」。音楽監督を務める土屋史人(ふみひと)さん(55)が一九九七年に赴任して以降、地元企業の協賛もあり、定期演奏会の開催を継続してきた。
しかし、日々の活動費や演奏会の演出経費などの負担は重い。演奏会の開催費用の支援を求め、二〇一九年十二月、初めてクラウドファンディング(CF)を実施した。この時は約百七十万円が集まり、二〇年二月の二十三回演奏会の開催にこぎ着けた。
新型コロナウイルス禍で迎える今年の演奏会も、開催が危ぶまれた。会場のアクトシティ浜松大ホール(二千三百三十六席)を借りるには多額の資金が必要だが、感染対策で席数は制限される。チケット収入の激減が見込まれた。
◆動画投稿で広がり
そこで昨年十二月に再びCFを募集したところ、県内外の百四十二人から、目標の百万円を大きく超える二百二十四万円の支援金が集まった。「皆さんの活動を見て元気と感動をもらっています」。CFサイトの専用ページには百四十件以上の応援メッセージが寄せられた。
支援の輪を広げるのに力を発揮したのが、昨年五月に動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」に開設した公式チャンネルだ。練習風景や演奏会の風景を部員らが撮影し、編集する。CF期間中は、支援の趣旨や活用法などを説明する動画を頻繁に投稿した。同部後援会長の小林秀人さん(55)=浜松市南区=は「部員たちが投稿した動画の力は大きかった」と話す。
◆返礼にリハ前演奏
CFに夫妻で三万円を寄付した角皆(つのがい)香奈さん(45)=同市東区=も、吹奏楽部の演奏に心を動かされた。「(コロナ禍で演奏会の中止が相次ぎ)成果を発揮する場がなくなっても、前を向いて努力する部員たちを応援したかった」と話す。「返礼品」として、部員たちが今年三月に夫妻のために開催したプライベートコンサートを振り返り、「アクトシティで選抜吹奏楽大会のリハーサル前に演奏してもらった。夫と聴いていたら泣きそうでした」と声を弾ませた。
追加の支援金で購入したハープとテナーサックスも音色を響かせる。「今日、来てくれたお客さまをどう喜ばせるか」が部の信条。「音楽の街」を支える若き担い手は、支援への感謝を音色に乗せて届けていく。 (山本晃暉)
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