<東京オリンピック(五輪):サーフィン>◇27日◇千葉・釣ケ崎海岸
新競技のサーフィン男子で、五十嵐カノア(23=木下グループ)は悔しい銀メダルとなった。準決勝で優勝候補のプロ最高峰チャンピオンシップツアー(CT)年間首位に立つガブリエル・メジナ(ブラジル)に0・24点差で競り勝ち、台風接近のため続けて行われた決勝は、CT年間2位のイタロ・フェヘイラ(ブラジル)に8・54点差の6・60点(20点満点)で敗れた。試合後は、24年パリ五輪での金メダル獲得へ始動すると宣言した。
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試合終了を告げるブザーが鳴る。五十嵐は両膝を浜辺につけてうなだれた。目を赤らめ、いつもの笑顔はない。4年前から願った金メダルの夢が、あと一歩及ばなかった。しばらく放心状態に陥り、言葉を振り絞るように「大切なオリンピックの舞台でここまで来たのに…。悔しい」。気持ちの整理がつかなかった。
準決勝でメジナとハイレベルな戦いを演じ、17・00-16・76という僅差で競り勝った。続く決勝で同じブラジルのフェヘイラと激突。台風が接近する悪コンディションが、五十嵐の金メダルへの行く手を阻んだ。ライディングこそフェヘイラより2本多い14本の波に乗ったが、得点が伸びなかった。
自然に左右されるサーフィンは、いかに良い波に乗って技を成功させるかが勝敗の鍵を握る。高く、持続性のある波をつかむには、風向きや潮位、海面の地形など複数の要因が関わる。米カリフォルニア生まれの五十嵐だが、五輪会場の千葉・釣ケ崎海岸を兼ねて「日本のホームブレイク」と語るほど、幼い頃から慣れ親しんできた。「台風が近くに来ていて、コンディションが10分ずつ変わる」中での決勝で、自ら立てた作戦が外れた。完敗だった。
4年前までは米国籍も持ち、過去には米国代表として国際大会に出たこともあった。初めて「波乗りジャパン」入りを公言したのは17年。日本だけでも200万人以上の愛好家がいると言われているサーフィンの魅力を、五輪を通じて広めるチャンスだと捉え、両親の母国・日本の国籍を選んだ。金メダル宣言をしたのも「カノアの名前を知ってもらって、サーフィンに興味を持ってもらいたい」と思ったからだった。
23日の開会式には、NBAでプレーする八村塁や女子テニスの大坂なおみとともに参加した。他の競技のアスリートがメダルを目指して日の丸を付けて戦う姿に心を奪われた。
同じカリフォルニアを拠点とする同い年のスケートボードの堀米雄斗とは「金メダルを一緒に取ろう」と誓い合い、気持ちを高め合った。その約束は果たせなかったが「メダルを取れたので一緒に写真を撮りたい」と語り、大会での自分の活躍で「1人でもカノアのサーフィンを見てうれしくなったら良い。メダルの色よりも、それが1番大切です」と胸を張った。
初めての五輪を終えたが金メダルという目標は変わらない。休むことなく、さっそく3年後のパリ五輪に向けて28日から始動。「海に入ってトレーニングして、ジムに行って。練習することが俺のカフェイン」。23歳は五輪の敗戦を糧に、また強くなる。【平山連】
◆世界のサーフィンの仕組み 五輪を統括する国際サーフィン連盟(ISF)とは別に、世界ツアーに出るトッププロを抱えるワールド・サーフ・リーグ(WSL)がある。選手が目指すのはWSLのトップカテゴリーであるチャンピオンシップツアー(CT)。その下のクオリファイシリーズ(QS)で上位になり、CTに昇格するシステムだった。今年からはCTとQSの間にチャレンジャーズシリーズ(CS)を新説。ピラミッドが3段階になった。五十嵐は16年からCTに参戦。都筑は今年CT選手になった。CSには、村上舜がランクされている。
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