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Sunday, December 5, 2021

水電解技術のダークホース「AEM形」 安価な鉄が高性能触媒に - ITpro

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グリーン水素を生産する技術のうち、これまで実用化で出遅れていたアニオン交換膜「AEM(Anion Exchange Membrane)」を使った水電解(AEM形水電解)は、触媒に貴金属を使わないという特徴を備える。加えて、それまでの課題を解決する技術的なブレークスルーがあったことで、性能やコストの点で先行する水電解技術を大きく超える可能性があると急速に注目を集め始めた。国内でもこの技術の開発に取り組む研究機関は幾つかあり、企業ではパナソニックが参戦した。

 これまで技術的課題のために採用が広がらなかった、アニオン交換膜「AEM(Anion Exchange Membrane)」を使った水電解の研究開発も盛んになってきた。

 AEM形の最大のメリットは、セルスタックの触媒やガス拡散層に貴金属を使わなくてもよいことである(図1)。これにより、材料費の大幅削減が見込める。

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図1 セルスタックもシステムもPEM形から低コスト化

図1 セルスタックもシステムもPEM形から低コスト化

AEM形水電解装置の構成と、産総研が実施した水電解試験の結果を示した。 PEM形との違いは、キャリアがOHで水溶液もアルカリ性になることで、触媒に非貴金属材料を使える点(a) 。産総研はシステム部もPEM形より低コストにできるとしている(b)。200kW級に大型化すれば、システム部の製造コストを2割削減できると試算した。膜のイオン伝導度や触媒性能の差から、電解効率はPEMより低いが、高電流密度では肉薄している(c)。(図:(a)は日経クロステック、(b)と(c)は産業技術総合研究所の資料を基に日経クロステックが作成)

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 貴金属が必須ではないのは、アルカリ環境のため触媒の酸性溶解が発生しないからだ。AEM形水電解のセルはPEM形と同じMEA構造で、電極反応はアルカリ水電解と同じで水酸化物イオン(OH)をキャリアとする。いわば、PEM形とアルカリ水電解を組み合わせた方式といえる。

 AEMには主に炭化水素系の膜を使う。現状、OHの伝導度を上げるためにアルカリ水溶液を使う必要がある。

 また、AEM形には、補器をPEM形より簡略化できるメリットもある。例えば、産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域 省エネルギー研究部門 熱流体システムグループ 研究グループ長の伊藤博氏が開発したAEM形水電解装置は、浄水器と水の配管をPEM形より簡素にした。同氏は、200kW級に大型化した場合、PEM形から約2割製造コストを下げられると試算した。

 浄水器を簡略化できるのは、PEMと違ってカチオン(陽イオン)サイトがないためである。ナトリウムイオン(Na+)やカルシウムイオン(Ca2+)などの侵入による膜の劣化が起きず、20µS/cm程度の不純物混合でも許容できる。

 一方、水の配管を略せるのは、生産するH2に水がほぼ混入しないためだ。H2側の気液分離タンクを小型化でき、さらに貯まった水を戻す配管を用意しなくてもよいという。

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