「有明アリーナ」「国立代々木競技場改修」担当、安東直・久米設計専務執行役員などに聞く(前編)
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東京五輪・パラリンピックの閉幕から3か月。会場となった新規恒久施設は、2022年から23年に始まる「後利用」のための工事に入っている。14~15年の基本設計当時あまり語られなかった設計者の取り組みは、どのような経験を基にしたものだったのか。「有明アリーナ」の基本設計などに携わった久米設計の面々に聞いた。
大手の設計事務所でも、大規模スポーツ施設を担当できる機会は必ずしも多くない。現在は設計部門を統括する立場にある久米設計の安東直専務執行役員・設計本部プリンシパルの場合は30代のときに、長野市の「エムウェーブ(長野市オリンピック記念アリーナ)」(1996年竣工)の設計が自身の在籍する部で行われた経験を持つ。
6500席を有するエムウェーブは、98年長野冬季五輪・パラリンピックでスピードスケート競技の会場となった。五輪後はスケート大会の他、見本市や展示会などのイベントにも活用されている。
「旧来の体育施設の考え方でハコものをつくってしまうと、五輪・パラリンピックが終わった後に負の遺産となってしまう。エムウェーブではスケート以外のスポーツやイベントの利用を想定し、大掛かりな可動型のスタンドや走行バトン(舞台機構)が考案された」と安東氏は説明する。「“後利用”を見据えたスポーツアリーナとしてはかなり初期のもので、今回の有明アリーナはその貴重な追体験となった」(同氏)
安東氏はその後、久米設計と梓設計のJVによる三重県四日市市の「四日市ドーム」(97年竣工)を担当。これもスポーツの他、展示会やコンサートなど多目的利用を可能とする施設となった。
設計業務の獲得はならなかったが、「札幌ドーム」のコンペにも参画(前田建設工業と共同)。また、結局は解体に至った旧「国立競技場」の改修案(国立霞ヶ丘競技場陸上競技場耐震改修基本計画)の他、「大規模ボールパークのコンペに参画するなどチャレンジを続けながら、知見を蓄えてきた」。
こうした経験を基に、「有明アリーナ」のプロポーザルに応募。基本設計者に選ばれた。なお、実施設計・施工は竹中工務店・東光電気工事・朝日工業社・高砂熱学工業JVが担当し、同段階では久米設計は監理・アドバイザリーを務めている。
最適解として生まれた反りのある外形
有明アリーナの場合は後利用の段階では、スポーツ以外にも音楽コンサートなど多様な利用が想定されている。
「発注者ニーズに対応できる体制とするため、プロポーザル段階からスポーツ施設の設計経験者と共にイベントホールやライブハウスの経験者にも担当に就いてもらった」と安東氏は語る。
有明アリーナのメインアリーナの四方の外壁は、外側に倒れるように傾斜している。その上に凹面状に反った屋根が載る。限られた面積の敷地で必要な客席数を確保し、なおかつ屋内コンコースと屋外(2階)ペデストリアンデッキをバランスよく設けるために導かれた外形だった。
安東氏は、「住宅地や親水公園に接するため、周辺に与える圧迫感を減らす必要がある。垂直に切り立った外壁やドーム型の屋根とするよりも望ましい形だと考えた」と説明する。
「センターコートのために最低限必要な天井高などを確保し、最適となる外形を導き出した。そのうえで構造的な合理性を検討し、建築として成立させている。国際的な大会時には、建物が全世界に放映される可能性がある。一般的なドーム建築とは違う、日本独自のアリーナの形を示したかった」
アリーナ内部や共用部では国産のスギ材を積極活用
有明アリーナの担当者の一人、設計本部建築設計部の藤森慶弘副部長は、これまでに「国士舘大学世田谷キャンパス メイプルセンチュリーホール」(14年竣工)や「門真市立総合体育館」(17年竣工)を手掛けている。
近年は、やはり多目的型の大架構建築で、2022年には世界水泳の会場となる「マリンメッセ福岡B館」(21年3月竣工)や、「ポートメッセなごや新第1展示館」(22年竣工予定)を担当。両展示場はいずれもPFI(民間資金を活用した社会資本整備)事業で、前者には九電工グループの構成員として、後者には竹中工務店グループの協力企業として参画している。
藤森氏によると、14~15年に基本設計に携わった有明アリーナでは、吊り屋根とする案、外装に木を活用する案など様々な可能性を追求し、工期やコスト、メンテナンス性とを照らし合わせて現実的な解に落ち着かせている。特に工期の条件が厳しかったため、基本設計段階から、屋根架構は片側より屋根をスライドさせる工法を前提として検討。実施設計段階で竹中工務店のトラベリング工法を採用する結果になった。
からの記事と詳細 ( 「ドーム建築と違う日本独自の形に」、開業待つ有明アリーナに設計者がこめた思い - ITpro )
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