北に富士山、眼下に田方平野と駿河湾、遠くには南アルプス−。絶景を望む地に昨年十二月にプレオープンした函南町平井のオートキャンプ場「negura CAMPGROUND(ネグラキャンプグラウンド)」。今月上旬の午後、管理人の渡部竜矢(わたなべたつや)さん(40)=同町=と町内外の男女五人が重機を使って土地をならし、たき火用のまきを置く小屋を作っていた。
海抜約三百メートルで、雪も舞う。「理想のキャンプ場にするんです。楽しいですよ」と渡部さん。キャンプ場開設資金を出したクラウドファンディング(CF)の支援者らが、開拓作業に協力している。
◆元IT技術者
北海道出身の渡部さんは大学卒業後、東京都内のIT企業の技術者だった。給料は良かったが「オフを楽しむために働いていた」という日々。十年前、当時組んでいたバンドで野外フェスに出演した際、キャンプを体験。「自然の中で、本能が刺激された」。関東や富士山麓で月二回、キャンプを楽しむようになった。
二〇一六年、函南町に中古の一戸建てを購入。新幹線通勤をしながら、週末はキャンプや釣りをした。近所には職人や芸術家も多い。好きなことに打ち込む彼らの姿を見て「自分は自由ではない」と感じ、「理想のキャンプ場開設」を決意した。
富士山が見えるなどいくつかの条件を決め、土地を探した。移住後に知り合った人の仲介で、地元酪農家から約二・一ヘクタールの牧草地を借りた。昨年六月末、十三年勤めた企業を退職。八月中旬、CFで開設資金を募った。
渡部さんは牧草が生い茂る土地を開墾する様子を、CF開始前から会員制交流サイト(SNS)でこまめに発信していた。その姿が支持され、開始から三時間で目標額の百四十万円を達成。最終的に約千百九十万円が寄せられた。
◆「自由」理想に
キャンプブームの中、一部利用者のマナー違反が問題となり、たき火台を使わない「じか火」の禁止など細かな規則が増えている。渡部さんはそれに理解を示す一方で「じか火でやりたい。できるだけ自由がいい」と理想を掲げる。
開拓にはCF支援者を含む四十人ほどが協力している。支援をした同町の会社員室伏俊(すぐる)さん(36)もその一人。「自分もキャンプが好き。開拓して成果が見えるし、お客さんから好評なのもうれしい」と笑顔で語る。高額の支援を受けた渡部さんは「この絶景に、自由に楽しめるキャンプ場ができれば、必ず成功する」と手応えを感じている。
現在は三つのキャンプサイトが稼働中で、最終的に五つとなる予定だ。利用予約はネットで受け付けていて、週末は予約が埋まることが多い。開拓の進み具合はSNSで随時、発信している。 (渡辺陽太郎)
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