上皇さまや詩人の北原白秋も滞在したとされる旧旅館で国有形文化財に登録されている「八鶴館」(東金市)の存続が危ぶまれている。歴史的な施設を残そうと、地元住民らは保存団体を設立し、同館を貸室にして運営を行うとともに、維持のための資金を募っている。(鈴木みのり)
県などによると、同館は「本館」「旧館」などの六棟からなり、樹齢千年以上の屋久杉を使用した格天井や石造り風の外壁が特徴。一八八五(明治十八)年に旅館として開業し、二〇〇九年には木造建築の五棟が国有形文化財に登録された。県内有数の桜の名所である八鶴湖と隣接する。
全国から多くの宿泊客が訪れ、一時期は千葉の三大旅館の一つとされた。学習院中等部在学中の上皇さまや昭和天皇の弟の高松宮さまも滞在されたほか、北原白秋が、芸妓(げいこ)による自身の詩「東金小唄」の披露を見たという。
一方、宿泊客は次第に減少し、〇六年に経営破綻。日本料理店として営業を継続したが、一九年秋の台風により、建物の一部が損壊し修繕費が必要に。新型コロナウイルス感染拡大も経営難に追い打ちをかけ、二一年三月に廃業した。
同年、地元住民らは同館の保存を目的とする市民グループ「みんなの八鶴館」を結成。建物のうち一棟はフランス料理店に貸し出され、二棟を会議や習い事に使用できる貸室にして収入を光熱費や修繕費などに充てている。
会員らは月二回の清掃を行うほか、館内の魅力を伝えるため、一般公開やインターネット上で3Dビューイングも実施。同団体の宮原政志代表は「地域の人にとって大事な場所を守っていきたい」と思いを語る。
ただ、多くても二十万円弱の収入は建物の維持費で消え、貸室の受け付け業務に訪れる会員らに交通費を支払うこともできない状況だという。同団体は活動継続へ寄付を募っている。宮原代表は「現在は会員の善意に頼っている状態。一人でも多くの人に八鶴館の現状を知ってもらい、活用について考えてもらいたい」と話す。寄付は「みんなの八鶴館」のホームページ「八鶴湖へ行こう!」から。
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同館では、地元住民から集めたひな人形を飾る「ひな祭り展」が十三日まで開かれている。旧館と別館ホールに人形約三百体が並ぶ。入場料は大人五百円、子ども二百円など。午前十一時〜午後四時で、火、水、木曜休館。問い合わせは同団体=電0475(78)5873=へ。
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