タイキシャトルが17日午前5時頃、北海道新冠町の養老牧場「ノーザンレイク」の馬房で死んでいたことが分かった。獣医師によって老衰による心不全と診断された。28歳だった。認定NPO法人引退馬協会が同日、発表した。
スポーツ報知では、引退馬の近況を紹介する夏競馬企画「なつウマ」として、ジャックルマロワ賞を制したタイキシャトルを取材し、17日付紙面で掲載したばかりだった。
以下、その内容のまま掲載する。
14日にバスラットレオンが挑戦して7着に敗れた仏G1の厚い壁を四半世紀近くも前に突き破った快挙はいまだに色あせない。かつて藤沢和雄厩舎に所属した最強マイラーは北海道日高の地で、今もその面影を残す。
日高山脈を背にした緑豊かな土地で、かつての名マイラーは静かな月日を送っている。1998年に海外のジャックルマロワ賞制覇やマイルCS連覇を果たすなどG1・5勝を挙げたタイキシャトルは、北海道新冠町の養老牧場「ノーザンレイク」で余生を過ごしている。同馬を所有する認定NPO法人「引退馬協会」から同じく預託されている2001年の宝塚記念馬メイショウドトウや、元競走馬の牝馬4頭とともに、のんびりと悠々自適の日々だ。
17年に種牡馬を引退後は、功労馬として他の養老牧場などを経て、20年7月開設の同牧場には昨年6月にやってきた。代表の川越靖幸さん(57)は、JRAの厩務員時代に名門・藤沢和厩舎でジャパンCや有馬記念などG1・3勝を挙げたゼンノロブロイなど数々の名馬を担当した経験を持ち、縁あってタイキシャトルと再会を果たした。当時は担当馬ではなく、その手綱を引いたのは牧場にやってきた時が初めて。それだけに印象が強く、「バネがあって、さすが年老いても大舞台で活躍した馬だけあるなと感じました」と、名馬の貫禄にうならされたという。
現在はコロナ禍を考慮して新規の見学申し込みを見合わせているが、引退馬協会の会員をはじめ、競馬ファンや関係者など多くの人々に温かく支えられている。昨年秋には現役時代に管理した藤沢和元調教師から、タイキシャトル宛てに飼料のプレゼントが届いたという。川越さんがお礼の連絡をすると、喜んだ名伯楽から「頼んだぞ!」と励まされたそうだ。
28歳を迎えた今、夏場は暑さに注意しながら午前中に放牧。午後は馬房で大好きな扇風機の風に癒やされて過ごしている。スタッフの佐々木祥恵さんは「今年は毛づやも張りもいいですね。元気のバロメーターは、すぐにパクッとかんで、ちょっかいを出すところ」と、取材中にもそのちゃめっ気たっぷりのしぐさを見せてくれた。往年の美しい尾花栗毛は健在で、その瞳は優しさをたたえていた。(坂本 達洋)=2022年8月8日取材=
◆タイキシャトル 父デヴィルズバッグ、母ウェルシュマフィン(父カーリアン)。1994年3月23日、米国の「Taiki Farm」生まれのセン28歳。美浦・藤沢和雄厩舎から、97年4月にダート1600メートルの未勝利戦でデビューV。芝でもダートでも豊かなスピードを発揮して、デビュー5戦目のユニコーンSから一気の8連勝を果たして、98年に仏G1・ジャックルマロワ賞、マイルCS連覇。通算成績は13戦11勝(うち海外1戦1勝)。G1・5勝を含む重賞8勝。総収得賞金は6億3770万5000円(うち海外2222万円)。馬主は(有)大樹ファーム。引退後は種牡馬として03年のNHKマイルCを制したウインクリューガーなどを送り出す。
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