顔や体の一部に自信が持てず本人が「欠点」と感じても、他人から見れば大した問題ではないことは多い。「醜い」「人より劣っている」と感じ、鏡で繰り返し確認するような場合は、醜形恐怖症(身体醜形障害)かもしれない。「治療法はありますが、病名を知らない医師も多いため、症状がある人は専門医に相談してください」と原井クリニック(東京都)の原井宏明院長は話す。
外見を醜いと感じ繰り返し鏡をのぞくケースも
◇心の問題
海外の統計では、醜形恐怖症の有病率は2.4%程度で、大半が18歳以前に発症する。特に多い悩みは皮膚に関すること、毛髪の問題、鼻の大きさや形などだ。他には胸の大きさや筋肉の付き方などさまざま。鏡や窓やスマートフォンに映る自分を何度も確認し、身支度に過剰な時間をかけたり、皮膚をむしったり、人と比べたりするなどの行為を繰り返すのが特徴だ。
「目で見える顔や体の箇所に悩みを抱えるため、心の問題とは考えず、精神科の受診に結び付かないケースが多いです。皮膚科や美容整形外科などへ行き、美容整形を繰り返す人も少なくありません」
努力しても悩みが解決しないことに絶望し、うつ状態に陥ることが精神科受診のきっかけになる場合や、社交不安症や摂食障害などを併発することで、醜形恐怖症の診断につながる場合もあるという。「摂食障害は外見にこだわる点では醜形恐怖症と同じですが、肥満や体重など身体全体に悩む点で異なります」
◇不安に耐える技法
醜形恐怖症はかつて別の名称で呼ばれ、病気としての位置付けも治療法も明確でなかった。治療法が確立されたのは、約10年前。「抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)による薬物療法と、暴露反応妨害法などの認知行動療法を行います。本人に治療について理解してもらい、気持ちに沿って行うことが大切なので、経過観察だけというケースもあります」
暴露反応妨害法とは、例えば鏡を見ずに出掛けるなど不安に感じることをあえて行うことで、不安に耐える力を養う技法だ。原井クリニックではグループで行い、より高い効果を得ているという。
「醜形恐怖症は思春期に起こりやすいことが分かっていますが、本人は行き過ぎた行動に気が付きづらいので、ご家族や学校の先生など周囲の人が注意を払い、気になることがあれば本人の気持ちを聞くようにしましょう」と原井院長はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/09/10 05:00)
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