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Monday, November 20, 2023

「形から入る」が残念なデータドリブン経営を招く - ITpro

ikanghus.blogspot.com

全5300文字

 経営層から現場まで全社員がデータを活用して業務を進めるよう、社内の体制や文化を築く「データドリブン経営」。DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を掲げる企業が増えるなかで、DXの一環としてデータドリブン経営の導入に挑む企業も増えている。

 ところがガートナージャパンの調査によると、データドリブン経営が目指す「全社的」なデータ活用に取り組み、「十分な成果を得ている」と回答した企業は2.2%にとどまっている。この傾向は数年変わっていないという。日本企業はデータドリブン経営に取り組みながらも、十分に成果を得られていない「残念」な状況にあるということだ。

 そこで本特集では、データドリブン経営を支援するコンサルティング会社や、データ基盤・活用のツールベンダー、そしてデータドリブン経営に取り組む企業への取材を基に、データドリブン経営が残念な結果になりがちな企業の傾向と、残念にならないためのポイントを解説する。

 今回はデータドリブン経営の導入に挑む企業が、その準備期間で陥りがちな残念ポイントを取り上げる。準備段階で重要になるのは、データドリブン経営の導入に当たり、「ツールを導入する」「データ基盤を構築する」など、形から整えようとしないことだ。

残念ポイント1:「データドリブン経営」を経営目標に掲げる

中期経営計画を立案する際に多くの企業が「データドリブン経営の実践」を目標に掲げる。しかしデータドリブン経営は、経営目標を実現するための手段であって目標ではない。データドリブン経営で何を達成したいのか明らかにする必要がある。

 経営目標を達成するための手段を、経営目標に掲げてはいけない――。これがデータドリブン経営を残念な状態にしないための1つめのポイントだ。

 データドリブン経営の導入に当たって「社員全員がデータを使って業務を実践する」といった目標を置くのはいいが、それは利益率の向上やパーパスの実現といった経営目標を実現するための手段だという点は明確にしておく必要がある。

 データドリブン経営を目指す企業にまず求められるのは、データドリブン経営を実践することで、企業として「何を実現するか」という経営目標の設定だ。

経営目標とデータドリブン経営の関係。経営目標を実現する手段としてデータドリブン経営を実践する

経営目標とデータドリブン経営の関係。経営目標を実現する手段としてデータドリブン経営を実践する

(出所:日経クロステック)

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 例えば東京海上グループでオンライン保険事業を展開するイーデザイン損保は、経営目標の1つとして「事故のない世界へ」を掲げている。同社はその実現手段の1つが、全社でデータを活用するデータドリブン経営であると位置づけている。

 そうした理念を具現化したサービスの1つが、2021年に提供を始めた自動車保険「&e(アンディー)」だ。自動車に付けたセンサーやスマートフォンアプリを通じてデータを取得し、そのデータを分析して顧客の運転の癖などを見つけ、スマホアプリを介して安全運転を促す、といったサービスを提供している。「事故のない世界へ」という目標がまずあり、その手段としてデータを活用しているわけだ。

 データドリブン経営で具体的な成果を上げるには、「データドリブン経営」そのものを経営目標に掲げるのではなく、データドリブン経営によって実現したい目標を据えることが欠かせない。

残念ポイント2:「ツール教育」から入る

データドリブン経営を導入するにあたり、データ分析人材の育成を目的に掲げる企業は多い。そこでまずデータ分析ツールの使い方の社員教育を始めようとする企業がある。しかしこれでは、データドリブン経営の効果が出ない残念な状況になってしまう可能性が高い。

 データドリブン経営が残念な結果になる企業が実践しがちなポイントの2つめが「『ツール教育』から入る」ことだ。

 データドリブン経営の実現に向け、手始めに「全社員をデータ分析人材にする」といった目標を掲げる企業は多いだろう。データ分析の基礎や、導入予定のBI(ビジネスインテリジェンス)ツールの利用方法の講座を用意し、全社員に受講を促すケースだ。

 ところが、データドリブン経営導入プロジェクトの初期にツール教育を始めてしまうと、せっかく導入したデータ分析ツールが利用されない残念な状況に陥りがちだ。ツール教育が先行し、社員にデータを活用した業務変革や事業創出へのマインドがないままでは、社員はツールを業務に使おうとはしない。

 このためツール教育より前に重要になるのが、データを使って業務を変革し、データを使った事業を創出するマインドを全社に定着させるための社員教育や、データドリブン経営に向けた業務改革の実践である。DXの一環として目指すデータドリブン経営において重要なのは、「『D(デジタル)』でなく『X(トランスフォーメーション)』だからだ」とRidgelinezの西尾佳祐ディレクターは指摘する。

採用時点でデータ活用の素養があるかを見極める

 社員教育以前に、そもそも採用の段階から、データを使った変革のマインドがある人材を集めている――そんな戦略でデータ活用の社内文化を築いたのが、データドリブン経営実践企業の1社であるDROBEだ。同社は婦人服のEC(電子商取引)サイト「DROBE」を運営する。

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