近年、日本男子勢がめざましい活躍を見せる通称「サンショー」(3000メートル障害)で、スター選手の系譜に連なる存在が誕生した。さらに、「駅伝もしっかり走りたい」という。
この振る舞い、陸上ファンなら箱根駅伝での快走が期待される「あの選手」を思い浮かべてしまうが、いざその名前を挙げると、彼は「憧れにはしない」ときっぱり口にした。その真意は――。
<「高校駅伝ここに注目」では、24日に開催される全国高校駅伝の男女注目選手のストーリーを紹介します>
日本高校記録を更新する快進撃
すらっと伸びた手足は、172センチの身長をより高く見せる。高校陸上界を席巻した今季の成績から、街中で声をかけられる機会も増えたという。
「プレッシャーにはなるけど、自分はむしろ『周囲が見てくれているから頑張ろう』と思えるんです」
涼しげな表情と裏腹に、佐久長聖(長野)の永原颯磨(そうま)選手(3年)は強心臓の持ち主でもある。
前回の全国高校駅伝の「花の1区」で区間2位と好走してからは、上昇曲線を描いた。3000メートル障害で2023年6月、日本高校記録の8分36秒06をたたき出した。前記録保持者は、この種目で今夏の世界選手権6位入賞の三浦龍司選手(順大)。永原選手が強く意識する世界トップクラスのランナーで、箱根駅伝でも主力の働きが期待される「あの選手」だ。
快進撃は止まらない。8月の全国高校総体では他を寄せつけないレース運びを見せつけるだけでなく、自らの高校記録をさらに4秒近く塗り替える8分32秒12で優勝した。
実績を伸ばしたタイミングと前後して、都大路優勝経験のある高見沢勝監督(42)は「責任を持たせることも競技力を伸ばすポイントになる」と永原選手を主将に指名した。マラソンの大迫傑選手(ナイキ)もかつて指導した名伯楽は、トップ選手の自覚を促せば促すほど、それを力に変えられる永原選手の性格を熟知していた。
卒業後は三浦選手と同じ順大へ
長野市内の陸上クラブで、小学1年から競技を始めた。もともと長距離種目が専門だったが、高校入学後に3000メートル障害にも取り組み始めた。2学年上の先輩がこの種目で活躍していたことに触発されたのがきっかけだった。
跳ね上がるような躍動感あるフォームには適性が詰まっていた。佐久長聖の市村一訓コーチ(39)は保健体育科教諭で、「(跳躍力が大事な)バスケットボールをやらせてもうまいんですよ。運動神経が良くて器用というのは、3000メートル障害に必要な素養ですね」と語る。
さらに、市村コーチはこう続けた。「跳躍のためにも上半身を鍛える必要がある。それによって、長距離でも上体をしっかり使った走りが可能になったんです」。駅伝と「サンショー」の理想的な相関関係が生まれた。
潜在能力の高さが評価され、11月には日本陸上競技連盟が有望選手を育成する「ダイヤモンドアスリート」に選ばれた。3000メートル障害では初選出だ。この種目に新たな足跡を示した自負が、永原選手をさらに目覚めさせた。
「三浦さんの競技動画を見ていると『こんなに速いのか』と感心していた。でも、身近に目標を作っていては、(成績に)追いついただけで満足してしまう。自分は世界と渡り合いたい。三浦さんは憧れじゃなくて超えるべき存在です」
卒業後は、三浦選手も力を伸ばした順大へ進む。まずは、都大路で名刺代わりの快走を見せたい。10月に左足甲を疲労骨折するアクシデントに見舞われたが、急ピッチで回復した。
佐久長聖は5000メートル13分台という高校トップレベルの記録を持つ選手が6人も名を連ねる。異次元の「最速集団」を束ねるリーダーは「チームが結果を出せるなら、任された区間で最大限の力を発揮したい」。集大成のレースで、さらなるサクセスストーリーを紡ぐ。【岩壁峻】
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