“甘さ”を断ち切ったエースが節目の勝利をつかんだ。

巨人の戸郷翔征投手(24)がヤクルト戦で7回途中を7安打3失点にまとめ、今季7勝目でプロ通算50勝に到達。高卒6年目の今季は開幕投手を任され、エースへの階段を順調に上ってきた。“大好物”を我慢している右腕が熱帯夜の神宮で堂々たる投球をみせ、チームに連勝をもたらした。

甘さNGで、徹底して厳しく攻めた。戸郷は初回1死二塁、ヤクルト山田を低めに落としたフォークで三ゴロ。続く村上も追い込んだ後、再び低めフォークで空振り三振に仕留めた。初回4点の援護をアドバンテージに主導権を渡さなかった。節目の通算50勝を挙げ「僕だけの力じゃない。たくさんの方のおかげ」と感謝した。50年の2リーグ制以降、高卒6年目以内での到達は球団6人目だった。

大好物はポテトチップスの「九州しょうゆ」の右腕に変化があった。「僕らしくないでしょ」と笑いながら続けた。「今年はお菓子を制限してるんです。もし、お菓子食べて負けたらどうしようと考えるようになって」と明かした。2年連続のチーム勝ち頭で、昨年11月末の時点で今季の開幕投手をたくされた。責任感が強まる中、自然と心境に変化があった。

誘惑の断ち切り方に、独特のメソッドを確立する。スーパーマーケットで欲しいお菓子が目に飛び込むと、レジには持っていく。ただ買ったことに満足感を得て、家では食べない。お菓子がたまった時は「高校の同級生とかに袋に詰めてあげる」。友人へのプレゼント用と割り切り、揺れ動く心を制御する。甘い誘惑がやってくると、「食べて負けたらどうしよう」と野球のことを考える。体重の増減がなくなり、調子の安定を感じている。

5点リードの中、7回1死一、二塁でマウンドを譲った。「投げ切らないといけない場面。あのようなところで降りてるようでは」とベンチでは自分への怒りがこみ上げた。クオリティースタートだったが、自分にも甘くなかった。【上田悠太】

▼戸郷がプロ通算50勝目を挙げた。戸郷はプロ6年目、通算111試合目で到達。巨人投手の50勝達成は40年沢村の73試合が最速で、111試合は17年菅野の109試合に次いで球団史上9位のペース。戸郷と同じく高校から入団した桑田の50勝はプロ5年目の90年7月17日、通算113試合目。年数は桑田より1年遅い戸郷だが、試合数では桑田より2試合早かった。

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