窓と反対側は一面ソファ席となっており、ここに座ると、縁側に座って石庭を眺めているような気分になる。壁に掛けられた植物の標本をイメージした額は、掛け軸の見立てではないか。
そんな空想も広がる、和のエッセンスがインテリアの随所に盛り込まれたレストランが、去年11月にパレスホテル東京に誕生したアラン・デュカスのレストラン「エステール」だ。店名は、デュカスの生まれ育った、南西フランスのオクシタニー地方の言葉で「母なる大地」を意味する。
アラン・デュカスのロゴは、名前の頭文字からアルファベットのAとDをほぼ左右対称になるようにデザインしたものだが、それと同じように、大地(La Terre)と海(La Mer)に含まれるRを背中合わせの左右対称にデザインして、人の形を象ったものとなっている。
野菜をかたどったオブジェが置かれているエントランス
大地と海の恵みを活かした料理
アラン・デュカスは、1987年にモナコのルイ・キャーンズ(Le Louis XV)で、野菜を中心にした料理「キュイジーヌ・ジャルダン」をスタートさせるなど、現代フランス料理にあって健康料理のパイオニアでもあった。
デュカスにそのときのことを尋ねると、「当時は野菜を主役にした料理といっても、みんな興味を持たなかった」と振り返る。しかし、「大地と海の恵みを活かした、砂糖と脂肪、塩を控えた料理」というのは、常に彼の心の中にはあったという。
それが形になったのが、2014年にリノベーションして、アラン・デュカス ・オー・プラザ・アテネ(Alain Ducasse au Plaza Athénée)が再オープンした際のことだという。世界に30軒あるデュカスのレストランで、唯一、肉を提供せず、野菜や穀物や魚を中心に据えた料理を提供すると決めたのだ。
そのリニューアルに際しては、精進料理の料理人である棚橋俊夫を招いて、技術だけではなく、その精神まで学んだのだという。
「ひとつの野菜だけでどのように料理をつくるか。そのためには自分自身が食材のなかに入っていって、考えないといけない。それが、精進料理から学んだいちばん大きなことです」
こう語るデュカスだが、精進料理の本場である日本にオープンした、このエステールではどのようにそれを形にしているのだろう。
まず、エステールでは、テイスティングコースだけではなく、前菜とメイン2皿、もしくは前菜2皿とメイン1皿、それにデザートが付くというプリフィックススタイルのメニューがある。
私が後者のコースでメインディッシュの魚料理として選んだのは、ほんのりと火を入れた鮪だったが、仕上げにかけられたソースは、優しい甘みがあり、赤タマネギは使っているものの、主にカツオと昆布の出汁と、サイドに添えてある3つの材料、アボカド、銀杏、金柑を主体につくったのだと言う。
メインディッシュの魚料理
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February 15, 2020 at 09:30AM
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精進料理の哲学を形に。デュカスが東京に開いた「大地」のレストラン - Forbes JAPAN
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