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Saturday, February 29, 2020

理知的な観察、伝統美を形に スカイツリー監修の澄川喜一展(産経新聞) - Yahoo!ニュース

 戦後の抽象彫刻の先駆者として活動し、東京のシンボルとなった東京スカイツリーのデザイン監修を手掛けた彫刻家の澄川喜一(88)。60年を超える活動を振り返る大規模な回顧展が横浜美術館(横浜市西区みなとみらい)で開かれている。代表作を含む初期から現在までの作品が披露され、日本の伝統美から喚起された作品を見ることができる。(渋沢和彦)

 澄川の代表作に「そりのあるかたち-1」(昭和53年)がある。ケヤキを素材にした水平方向に広がる木彫。そりかえったシャープなフォルムとそれを受け止める直線的な造形が組み合わされ緊張感をはらむ。

 澄川はこの作品で、主に木彫作品を発表する優れた彫刻家に与えられる平櫛田中賞を受賞し、彫刻家としての地位を確立した。

 日本刀などに見られる「そり(反り)」と「むくり(起り)」。澄川は反ったり、その逆にふくらんだりする曲線の造形美に、少年時代から魅了されていた。

 50年代から始まった「そりのあるかたち」はシリーズとなり、水平から上方へ向かう造形などさまざまに変化し、さらには金属や石などを使った野外彫刻でも展開され、やがてデザイン監修した東京スカイツリーの形に結実した。塔の断面は足元では正三角形で、上に行くにしたがい円形へと変わる。「そりとむくり」の考えは、見る場所によって微妙にそったり膨らんだり見える意匠に反映された。

    ■  ■

 島根県六日市町(現吉賀町)の旧家に生まれた澄川。高校入学のため山口県岩国市の親戚の家に下宿。そこで木造の錦帯橋の木組みの美しさに感銘し、日々、スケッチを繰り返した。修学旅行で法隆寺をはじめとする京都や奈良の木造建築や運慶・快慶の仏像などを見学。建築美や木彫の魅力に取りつかれ、建築家や彫刻家になりたかったが、数学が苦手だったため東京芸大の彫刻科に進学した。木彫の大家、平櫛田中(1872~1979年)教室で塑造と木彫を学んだ後、具象彫刻の第一人者、菊池一雄(1908~85年)の薫陶を受けた。

 初期にはブロンズ彫刻で人体作品を制作。やがて、クスノキなど木を素材にした「MASK」シリーズに。アフリカの仮面や島根県の神楽面などから刺激を受けたという有機的なフォルムの作品は、大胆で原始的で呪術的な印象さえ与える。「そりのあるかたち」シリーズ以後の知的な作品とは作風が異なるため、同じ作者のものかと疑ってしまう。

    ■  ■

 澄川は本展図録にこう記している。「樹は生きているのです。樹の声を聴き取りたいと思っています」

 自然の中で成長した木のくせを見極めながら、内在する形を抽出して表現する。

 横浜美術館の柏木智雄副館長は澄川の作品について「素材に対する理知的な観察から生まれた深い洞察がある」と指摘する。

 平成27年、郷里の島根県立石見美術館で個展が開かれたが、首都圏の公立美術館で90点ほどの作品を展示した大規模な回顧展は今回が初となる。展示作品を見て、澄川は「まだまだだね。もうちょっと考えなければ」と、謙遜する。

 彫刻界の重鎮はいまも現役。まだ先を見据え、創作意欲は衰えない。

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 「澄川喜一 そりとむくり」展は5月24日まで、休館日はご確認を。一般1500円、問い合わせは同館。

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February 28, 2020 at 10:53PM
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