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Wednesday, March 4, 2020

これが2人の絆の形かも 私とけんかの絶えない娘へ - 朝日新聞社

〈依頼人プロフィール〉
加納まりこさん(仮名) 49歳 女性
東京都在住
会社員

     ◇

14歳の娘は物心ついた頃から、何か言うたびに感情を爆発させるように怒り、私に対して非常に攻撃的でした。そして今は思春期特有の舌鋒(ぜっぽう)で鋭く私を傷つけます。

年子の弟は非常に穏やかな性格で、母親の私とはほとんど確執もありませんが、娘は幼い時に母の愛情を奪われたと感じたせいか、もしくは私が息子をかわいがりすぎたせいか、とにかく扱いにくく、いまだにけんかなしで一日を終えることができません。

怒る理由は本当にささいなことです。小さかった頃は弟の風船を割ったので「あやまりなさい」とたしなめたり、風邪をひいたので「今日は家で休みましょう」と言ったりすると、爆発。「お風呂入って」「タオルはかけて」といったような当たり前のことを言っただけで、まるで虐待を受けたかのごとく反撃してきました。母親が言うことは「敵が仕掛けてきたわな」とでもいうように、ことごとく反抗するので、私も疲弊してどんどん追い詰められていきました。

「私は彼女の母親としてふさわしくないのではないか」「原因は私にあるのではないか」と心底悩み、苦しみました。どうして私の愛情を信じてくれないのか、そんなに私は悪い親なのかと考え始め、いったん負のスパイラルに入り込むと、どうしようもない親子関係ができあがってしまいます。

娘が3歳ごろから小学校半ばくらいまではカウンセリングにも通いました。最初に出会ったカウンセラーは「典型的な発達障害ですね。あきらめてください」と言いました。

でも、私には「障害」だとは思えませんでした。現に発達障害を否定するカウンセラーの方もいました。母親の私から見ると、それは彼女のあり方であり、個性のひとつにしか思えません。母親や女性が嫌いならそれはそれでいいや……とふっきれるようになると、娘も少し落ち着いてきたように見えました。

いずれにせよ、私自身も好き嫌いがはっきりしていて、いわゆる「お母さん」らしくはない未熟な人間です。人よりも自己主張が強く多感な娘は、不運なことに、そんな未熟な母のもとに生まれ、日々取っ組み合いを強いられてきたのでしょう。思えばそんな不器用さも私とうり二つです。

先日、私にがんが見つかりました。娘は机の上においてあった検査結果を見たらしく、その晩彼女は布団の中で声を殺して泣き続けていたそうです。夫が部屋をのぞくと、「私にはママしかいないのに、ママがいなくなったら死ぬ」と言っていたそうです。娘と病気の話はしていませんが、LINE(ライン)に「がんばってね」というメッセージがきました。

でも、だからといって日々の争いが絶えることはなく、この関係はこれからもずっと続くのでしょう。そして、それが私たち母娘の絆の形なのかもしれません。

娘は外ではいわゆる優等生で、勉強もスポーツも芸術も音楽もとにかく何でも一生懸命で、一番を目指す子です。周りから「よくできたお嬢さんで」と言われるたびに、「いやいや、家では悪魔だよ」と内心思ってきましたが、嫌なことがあっても、じっと耐えて消化するまで待つ根性は、我が娘ながら尊敬しています。

娘はサッカーが上手で、同年代の男の子とも互角に張り合っています。一見個性が強い娘ですが、実はトゲの中に産毛に包まれたような繊細でやわらかい部分が見え隠れしています。外から見られる自分と、内側の自分の間でまだまだ揺れているようですが、いつかそのギャップも埋まるでしょう。

そんなけんかの絶えない娘へ、母親の私から花束を贈りたいです。淡い緑とスモーキーなパステルカラーの繊細なブーケで、彼女の内に秘めたフラジャイルな個性を表していただけたらうれしいです。

これが2人の絆の形かも 私とけんかの絶えない娘へ

花束を作った東さんのコメント

繊細なパステルカラーのブーケをというリクエストに応え、ピンクからベージュのスモーキーなトーンのカーネーションと、スイートピーをメインにアレンジをしました。

ただし、かわいらしいだけでなく、娘さんの持つ強さも表現したかったので、ふわふわとした花の真ん中に観葉植物のネオレゲリアを挿しました。堅い個性的な葉を持つ、熱帯の植物です。こちらは花が終わった後も、水に浸しておけば根が伸びてくるはず。根が伸びたら土に植え替えられます。

まわりには淡い緑でスモーキーなニュアンスのあるゼラニウムの葉と、アイビーをぐるりと。花束全体から漂う香りはこのゼラニウムの葉からきています。

強い観葉植物と繊細でやわらかい花のミックス。相反するものだからこそ、そこに唯一無二の独特の個性が生まれます。強さと繊細さを兼ね備えた娘さんのすばらしい才能が、これから大きく花開きますように。

これが2人の絆の形かも 私とけんかの絶えない娘へ

これが2人の絆の形かも 私とけんかの絶えない娘へ

これが2人の絆の形かも 私とけんかの絶えない娘へ

これが2人の絆の形かも 私とけんかの絶えない娘へ

(&編集部/写真・椎木俊介)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み


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  •      ◇

    「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
    こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
    花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
    詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

    フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

    これが2人の絆の形かも 私とけんかの絶えない娘へ

    1976年生まれ。
    2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
    近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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    PROFILE

    椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。

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