PK方式でのヒーローは、山梨学院高(山梨)のGK熊倉匠(3年)だったが、90分間で最も輝いていたのは帝京長岡高(新潟)のMF川上航立(3年)だった。
2点を追いかける後半14分、MF廣井蘭人(1年)が前線へ送ったパスをFW葛岡孝大(3年)がヘディングでそらすと、右サイドバックの裏をとった川上へと通る。バウンドしたボールをとらえた強烈なボレーシュートは、GK熊倉匠(3年)のニアサイドを抜いてゴールへ突き刺さる。
攻勢を続ける帝京長岡は、同33分、廣井が倒されてPKを獲得する。決めれば同点という場面で、キッカーは帝京長岡のエースナンバー14を背負う川北。GK熊倉が右へ飛ぶ中、ど真ん中へチップキックを沈めて2-2とした。
PK方式での1番手のキッカーも務めたが、今度はGK熊倉がストップ。3人が成功させた山梨学院に対し、帝京長岡は1人の成功にとどまり、準決勝で敗退となった。「自分たちの実力不足で負けてしまった印象です」。川北は素直にそう認めた。
親元を離れG大阪門真Jrユースから「雰囲気がよかった」帝京長岡に入学した川上。メンバー入りするも出番がなかった1年次の選手権はベスト8、レギュラーとして活躍した2年次はベスト4、キャプテンマークも託された3年次はその上も期待されたが、PK方式の末に敗れ、県勢初の決勝進出とはならなかった。
「わがままを受け入れてくれた」とキャプテンはチームメイトへの感謝を語る。「やりすぎじゃないかというくらい」と自らを省みるが、古沢徹監督は「僕がというか川上航立がこのチームを引っ張ってきた」とその存在の大きさを評した。川上もまた指揮官に対して「親みたいな感じです」と信頼の厚さを語り、「1秒たりとも気を抜くことなく向き合ってくれた」と感謝を並べた。
(取材・文 奥山典幸)
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