5月下旬に千葉市で行われたサッカー・ワールドカップ(W杯)予選試合で、クーデターを起こしたミャンマー国軍への抗議を示す3本指を掲げた同国のピエ・リヤン・アウン選手(27)が帰国を拒否したことが16日、分かった。同選手は17日未明、関西空港で報道陣に「自分の意思で帰国を拒否した。これから難民申請する」と語った。

同選手は16日までの共同通信とのオンラインインタビューで、帰国すれば2月のクーデターで全権掌握した国軍に拘束され「命の保証がない」と懸念を表明。アウン・サン・スー・チー氏(軟禁中)が率いる政権が復活すれば「国に帰りたい」と述べた。

日本法務省は5月、緊急避難措置として日本在留の継続を望むミャンマー人に在留延長を認めると発表していた。同選手は他のミャンマー選手とともに16日深夜に関西空港から帰国の途に就くことになっていた。

5月28日の日本代表戦はクーデター後、ミャンマー代表にとって初の国際試合だった。同選手は国歌斉唱の際、英語で「WE NEED JUSTICE(私たちには正義が必要)」と記した3本指を掲げる姿がテレビで放映されて注目を集めた。ミャンマーの反国軍デモの参加者が取るポーズで、独裁への抵抗を意味している。

同選手は共同通信に「国軍はニワトリ1羽を絞め殺すかのように国民を撃ち殺しており、許せない」と強く非難し、来日前から3本指のポーズを取ると決意していたと説明した。来日してサッカー代表選手という立場で抗議することは国際社会への「メッセージ性が強いと思った」と語り、「正義と公正な社会を再び獲得できるよう、日本政府と国際社会に後押ししてほしい」と求めた。(共同)