新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、東京都に十二日から四度目の緊急事態宣言が発令されます。首都圏の神奈川、千葉、埼玉三県と大阪府に適用中のまん延防止等重点措置も延長されます。期限は八月二十二日までです。
東京五輪は緊急事態宣言下で行われることになり、首都圏の一都三県すべての競技会場=写真は国立競技場=は無観客となりました。
菅義偉首相は「先手先手で予防的措置を講じる」と言いますが、三週間前、感染拡大の兆候を見逃して宣言を解除した結果ですから、「後手後手」と言うべきでしょう。
論説室内の議論でも、首相の判断や政府の対策を迷走と断じる意見が相次ぎ、九日付社説では「対策の迷走が目に余る」と指摘しました。
「安全安心の大会」は感染抑え込みが前提なのに宣言を解除してしまう。その結果、感染者が増え、慌てて宣言を発令する−。首相の判断がなぜ、これほど迷走するのか理解に苦しみます。
迷走した理由の一つは、通常の大会のように観客を入れての開催に固執したことでしょう。感染状況の悪化はそれを許さず、ぎりぎりまで判断を先延ばししたことが、混乱を広げてしまいました。
それは五輪の一年延期に当たり、当時の安倍晋三首相が「完全な形で」「(新型コロナを)克服した証しとして」開催したい、と述べたことが原因なのかもしれません。
今も自民党内で影響力を持つ安倍氏への配慮が菅氏の判断に影響したのなら「私や妻が関係していたということになれば首相も国会議員も辞める」との発言が公文書改ざんのきっかけとなった森友学園を巡る問題と同じ構図です。
「完全な形」が足かせとなり、感染症対策の判断を誤ったとしたら、国民への背信行為です。読者からも本紙に、五輪開催で「国民生活に大きな影響があった場合、進退をかけるか否かくらい首相を追い詰めてほしい」と厳しい声が届いています。 (と)
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