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Friday, July 9, 2021

<せんだい進行形>「防災テック」動き活発 IT駆使し新サービス考案 - 河北新報オンライン

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デモ画面を示しながら、支援物資の受発注システムの仕組みを説明するプライムバリューの吉田社長

 ITを防災関連サービスに活用する「BOSAI-TECH(防災テック)」を仙台市が推進する中、仙台圏の企業で参入に向けた動きが活発化してきた。各社は避難所への移動、避難所運営、支援物資の受発注を効率化するシステムやビジネスアイデアを考案。実用化に向けた鍵は、災害発生時にとどまらない「普段使い」にある。
(報道部・小木曽崇)

支援物資の発注効率化

 「自治体から電話やメール、ファクスで支援物資の発注が波のように押し寄せた。配送後は請求書を発行する膨大な作業がある」
 仙台市が昨年8月に開催した防災テックのオンライン説明会。東日本大震災当時、約400万点の支援物資を提供したコープ東北サンネット事業連合(仙台市)の担当者が振り返った。
 自治体からの発注内容は「食料100人分」などと情報量が少ないケースも多い。支援企業が自治体に問い合わせ、自治体はそれを受けて避難所に確認するなど、発注内容の確定までには手間を要した。
 ウェブコンテンツ制作のプライムバリュー(名取市)はNECプラットフォームズ(東京)と共同で、電話やファクス、インターネットのどれを使っても、避難所で提供する食料や日用品をスムーズに受発注できるシステムを開発する。年度内にも試作品を仮運用する見通しだ。
 自治体にはネットが苦手な職員もいる。プライム社代表取締役の吉田亮之さん(36)は「時代の流れと逆行しているかもしれないが、旧来の手法でも受発注できるのが最大の特徴」とPRする。
 電話、ファクスで寄せられるアナログデータをデジタル変換するのに必要なのが、発注書の共通化だ。
 ネットの場合は例えば「食料」「主食」「おにぎり」の順に選んでもらい、電話でも自動音声に答える方式で発注物資を絞り込む。ファクスは事前に決めた発注書を、手書き文字を読み取る機能が付いたファクスで受信し、発注内容のあいまいさを排除する。
 自治体と支援企業は、共通化する発注書の様式をあらかじめ決めておく必要があるが、吉田さんは「様式の精度が発注の精度に直結する。事前にしっかりと打ち合わせをすることが、非常時の備えになる」と強調する。
 同社は支援企業、自治体の業務効率化だけでなく、先行導入事例の受発注記録のデータベース化も目指す。非常時に必要な支援物資や、適切な栄養バランスの傾向を把握することは、未来の災害にも役立つ。

アプリで避難所へ誘導

 ソフトウエア開発のアンデックス(青葉区)は、スマートフォンアプリを活用した避難所への誘導システム、避難所運営支援システムの二つを開発する。
 誘導システムは、同社が提供する観光用アプリを通して、災害情報を国から自治体に伝える全国瞬時警報システム(Jアラート)を受信し、最寄りの避難所へのルートを示す。利用者が「橋が壊れている」「建物が倒壊している」などと通行できない場所を写真や文章で投稿する機能もあり、他の利用者は危険箇所を避けて移動できる。ユーザー登録した家族同士は、互いにどの避難所にいるか知ることができる。
 避難所運営支援システムは、自治体を顧客に想定。人工知能(AI)カメラで避難者の性別、年齢、人数のデータを瞬時に把握し、自治体のサーバーに送信。人数集計、初動段階で必要な物資の種類や量の判断に役立てる。
 同社は2018年、各自治体で原則1事業者だけに付与される「地域広帯域移動無線アクセス(地域BWA)」の免許を取得。携帯大手の利用が制限されても影響を受けず、サービス展開に優位性がある。
 現状は市内17カ所の基地局で「サービス提供範囲は点にとどまる」(同社)が、今後2年間で500カ所に増やし、人口カバー率を95%に上げる。
 代表取締役の三嶋順さん(53)は実用化に向けて「ユーザーの信頼を勝ち取ることが大きな壁だ。まずは自治体に採用してもらうのが近道になる」と話す。

5G使い混雑状況把握

 システム開発のトレック(青葉区)も、避難所運営を支援するサービスを提案する。避難所入り口に設置したタブレット端末などで避難者の顔を認識し、年代や性別などの属性データを自治体に集積する。
 高速大容量が特長の第5世代(5G)移動通信システムを使うことで、短時間で大人数の顔を登録することが可能となった。市民は避難所の混雑具合のほか、手持ちの写真と照合することで家族の避難先を把握できる。自治体も受け付け作業が効率化でき、データ共有も容易となる。
 2019年10月の台風19号豪雨が開発のきっかけとなった。若手社員が「避難所に空きがなかったら、暴風雨の中に長時間いることになる。不安を感じたまま結局避難所に行けなかった」と、自身の体験を基にシステムづくりを提案した。
 どう収益化につなげるかが、実現に向けた課題となっている。同社エンジニアの米須龍希さん(32)は、避難所の多くが小学校に開設される点に着目する。
 「防災学習のほか、新型コロナウイルス対策として教室の密を避けるモニタリングにも活用できる。直接的に利益を生み出せる活用方法を構想中だ」と思案を巡らせる。

[BOSAI-TECH]仙台市がITを取り入れた新ビジネス創出を推進する「X-TECH(クロステック)」の防災産業版。市は2020年度、国内大手企業や海外企業と地元IT企業との協業を促そうと、事業創出プログラムや商談会を実施。本年度は生命保険、損害保険、電機の大手企業も参加する「防災産業オープンイノベーションプラットフォーム(仮称)」を設立し、仙台発のサービスを世界に売り込む目標を掲げる。

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