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Thursday, October 28, 2021

(社説)衆院選 家族の形 多様さ認める社会に:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル

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 一人ひとりの生き方や価値観を尊重する寛容な社会をめざすか。それとも、多くの人が抱える苦悩に目をつぶり、明治以来の形にこだわり続けるか。

 分野によってとりうる政策の幅が狭まり、各党の主張が似かようなか、衆院選の大きな対立軸になっているのが「選択的夫婦別姓制度」への賛否だ。

 多くの野党と公明が導入を公約に掲げる一方、自民は「改姓による不利益の解消」を主張するにとどまる。日本維新の会は夫婦同姓の原則を維持したうえで、旧姓で社会活動が行える仕組みの整備を唱える。

 現行民法は夫婦に同じ姓を名乗ることを強制しており、96%の夫婦で妻が姓を変えている。改姓に伴う不利益や不便、アイデンティティーの喪失はかねて問題になっており、法制審議会は25年前に法改正を提言した。

 別姓を強いるのではなく、希望する夫婦は互いに婚姻前の姓を名乗れるようにするというものだが、自民の反対でたなざらしになってきた。昨年末に策定された政府の第5次男女共同参画基本計画では、00年の最初の計画からあった「選択的夫婦別氏(姓)」という用語が、自民の求めで消されてしまった。

 時代の流れに逆行する措置というほかない。政府が17年に行った世論調査によると、60歳未満では「法改正に賛成」との答えが半数に達している。

 旧姓を通称使用できる範囲を広げれば足りるとの声があり、実際に取り組みが進む。だが権利・義務に関わる重要な局面で戸籍上の姓を求められることは多い。また、金融機関などでの本人確認が厳格になり、二つの姓を使い分ける負担は増している。やむなく事実婚を選べば、税制上の優遇措置を得られないなどの不利益が待ち受ける。

 こうした状況をどこまで理解しているのだろう。岸田首相は国会で「引き続き、しっかりと議論すべきだ」と答弁したが、論点は出尽くしている。何より国会での議論を封じてきたのは当の自民ではないか。

 導入反対派が持ち出すのが、「家族の一体感が失われる」という理由だ。これも、別姓の事実婚カップルが幸せな家庭を築いている多くの事例を見れば、説得力がないのは明らかだ。

 最高裁は7月、民法の規定を合憲と判断したが、別姓の導入を否定したわけではなく、どんな制度にするかは、国民の代表でつくる国会が決めるべきだという見解を示している。

 今回の選挙では、同性カップルの権利保障を公約に盛り込む政党もある。多様な生き方を認め、個人の尊厳が守られる国に向けて歩を進めるかどうかは、有権者の選択にかかっている。

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