新型コロナウイルス禍で客離れに苦しんだフィットネスクラブの新規出店が、仙台市内で相次いでいる。感染拡大前の開業計画が具体化した例もあるが、根底にあるのはニーズを見込んだ積極戦略。プールやスパを備えた従来の「総合型」に加え、設備を絞って料金を抑えた「トレーニング特化型」など、形態も多様化。各店は工夫を凝らし、顧客獲得に汗を流す。(報道部・土屋聡史)
低価格化、最新設備、中心部に20店林立 過当競争との指摘も
「いらっしゃいませ。ごゆっくりどうぞ」。5月下旬、仙台市青葉区のアエル31階にある「アッティーボジム 仙台アエル31」には、午前10時の開店とともに幅広い世代の男女が次々と訪れた。
5月1日に開業した同店のうたい文句は「JR仙台駅そばで月額3300円」。月額1万円を超えるジムも多い中、風呂やシャワーを省いて低価格を実現。最上階からの眺望でも差別化を図る。
「上々の滑り出し」とアッティーボ運営事業部の高堀和也副本部長(34)は手応えを語る。健康寿命を意識する中高年のほか、巣ごもり中に動画サイトなどを通じ肉体改造に目覚めた若年層の需要があるとし「新型コロナでジムを敬遠する流れはいずれ落ち着く。業界は伸びる素地がある」と言い切る。
その700メートル南に昨年11月開業したのが、JR東日本スポーツ(東京)が運営する「ジェクサー・ライトジム&スパ24仙台店」(青葉区)。就業層や主婦層の需要を見込み、コロナ禍前に進出を決めた。
月額5478円で最新のトレーニング機器を使える上、スパやサウナ、スタジオでのプログラムも楽しめる。高辻一能マネージャー(40)は「価格、内容ともに勝負できる水準だ」と胸を張る。
ただ、これらの出店ラッシュは過当競争を招いているとの見方もある。ジム経営情報誌「フィットネスビジネス」を発行する「クラブビジネスジャパン」(東京)などの調べでは、感染拡大が本格化した20年3月以降、市内で少なくとも大手などの9店が開業。さらに2店の出店計画があり、17~19年に開業を確認した4店を大きく上回る。
市内の業界関係者によると、仙台駅の半径3キロ圏には20店近くが林立。日本のフィットネスクラブ需要は人口の3~4%といい「供給過多」との見方もある。
このような状況下、老舗は従来の顧客の声を意識する。市内の現存ジムで最も歴史がある1986年開店の「グラン・スポール上杉」(青葉区)は、現地で建て替え中の施設のプールなどを充実させ、従来の総合型に磨きをかける計画だ。
笹氣健治社長(54)は「時代の流れに沿って設備を縮小する選択もあったが、以前からのお客さんのニーズに応えたかった」と説明。今後の業界を「類似のサービスが増える中、利用者の満足度を高めることがますます重要になる」と見通す。
AI指導の「ファディー」は東北初出店
仙台市内でフィットネスクラブの競争が激しさを増す中、トレーナーの指導ではなく人工知能(AI)を搭載したマシンが体の鍛え方を伝授する女性会員限定ジム「FURDI(ファディー)」の東北1号店が、同市太白区柳生に開店した。
約140平方メートルのフロアに6台を設置。利用者はダイエットや姿勢改善など目的に応じ、約200の運動メニューから15種目(計30分)のプログラムを組む。マシンは利用者の運動中の動きをモニターしており、フォームが崩れると「上半身をもっと曲げる!」といった「指導」が画面上に表示される。
入会後2回はトレーナーが対面で指導し、3回目以降は1人でマシンを使って運動できる。月に1度、体の変化に応じてメニューを調整。プログラムは30分と決まっているため「仕事や家事の合間に効率的に運動して成果を出したい」と入会するケースが多いという。
料金は月契約8778円など。東北では2月に1号店が出た仙台に続き、山形、郡山両市にも進出した。
柳生店の佐藤菜侑店長(35)は「人目を気にせず、黙々とマシンに向き合いながら的確に鍛えられる。最新のトレーニングをぜひ体験してほしい」と話す。
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