英国のエリザベス女王が8日、死去した。96歳だった。1975年(昭50)5月の女王来日時に対面した黒柳徹子(89)が、「エリザベス女王との思い出」と題した追悼コメントを寄せた。

以下、全文。

エリザベス女王が日本にいらした時、私は英国大使館で、お目にかかった。たいへんお元気な方で、その日は、NHKや色々なところにいらした後だったというのに、生き生きとしていらした。私と向かい合うと、「テレビのお仕事ですってね、どういう事をなさるの?」とおっしゃったので、「女王様が羽田にお着きになって、皇居までいらっしゃるところを、中継いたしました」と言ったら、「うまくいったの?」とおっしゃったので、「はい、女王様が上手におやり下さったので、うまくいきました」と申し上げました。

すると女王様は、「あははは」と、大きくお笑いになり、その時、気がついたのだけど、展覧会で見るような冠。中央にうずらの卵くらい大きい真珠がついていて、あと3カラットくらいのダイヤモンドがグルグルと真珠を取り巻いているのが、冠中に並んでいるのをお付けになっていて、あと、日本だからという事だと思うけど、ネックレス、イヤリング、すべて真珠だったけど、どの真珠も、生まれて見た事のないような大きくて美しいものが、デザインされていた。だから、女王様が「は、は、は」とお笑いになると、全部の宝石が揺れるので、それはまさに、燦然とは、こういう事を言うのだと思わせてくれました。

光り輝く中に、女王様は立っていらした。私は、英国系の女学校を卒業していたので、英国風の英語を習わされたけど、女王様は実に自然で、これが英国風です、という感じは全くなかった。次に女王様は「日本は、チャンネルはいくつあるの?」とおっしゃったので、その頃は7つだったので「7つでございます」と申し上げた。普通は女王様に質問をしてはいけないという風に教わっていたけど、その日はこじんまりした家庭的なパーティーだったので、私は女王様に「イギリスは、チャンネルはいくつございます?」と伺ってみた。女王様は一瞬びっくりしたように、私をご覧になったけど、すぐ笑って大急ぎで「スリー」とおっしゃった。そのおっしゃり方が、あまりに早かったので、私は思わず笑ってしまって、女王様もお笑いになった。

そして、こう付け加えた。「もうじき1つ増えるから、4つになるわ」。わたしは、あら良かったと思ったので、女王様に「さようでございますか」と言った。すると、女王様は「今日NHKで見たんだけど、NHKは放送を全部コンピューターで出すんですってね」とおっしゃった、私は、急いで「コンピューターより、イギリスのBBCで放送されるものを、私はいつも感動して拝見しております」と言った。女王様は、「ええ、確かにBBCはいいけど。コンピューターはないの」とおっしゃるので、私は、「西洋の演技は、BBCの俳優さん達の演技を、いつもお手本にしております」と言った。女王様は「確かに、彼らは上手よ。でもコンピューターはないの」とおっしゃるので、ますます私は困って「品格のある演技はBBCで拝見しております」と言うと、女王様は、「そう、確かに。でもコンピューターはないの」とおっしゃった。

私は、なんか女王様をいじめているような形になっちゃって困ったなと思った。でも、女王様は本当にコンピューターに気をとられていらっしゃる風だった。そして、「あなたは、ご自分の放送されたものを見るの?」とおっしゃったので、「はい、家に帰ってビデオで録ったものを見ます」と申し上げると、「あら、お家に録れるのがあるの?」と、またびっくりしたようにおっしゃったので、「何時間でも録れる様になっております」。女王様は私に質問をなさりたかったようだけど、私の後ろに人が並んでいるので、大使が「そろそろ」とおっしゃったので、私は「失礼申し上げました」と言って、その場を去った。

私の報告から、女王様にビデオの録画できる機械と、日本で行動なさったニュースのテープを付けて、お土産に差し上げる、という事になった、と後から聞いた。女王様ほど、正直で、お可愛らしくて、そして威厳のある方に、それ以来お目にかかっていない。ちなみに、お背は、私より3センチくらいお高いくらい。外国人の中では、小柄の方だとお見受けし、それがどんな宝石でも驚かない女王というものだと、私は後々感動した。そして、人気がおありなのも、もっともと、今も思っている。