アルゼンチンは一昨年末のカタールW杯グループリーグ初戦で、サウジアラビアに1-2で敗戦。FWリオネル・メッシが序盤にPKを決めて先制したものの、後半の立ち上がりにまさかの2失点を喫し、まさかの逆転負けで世界に衝撃を与えていた。
1年前を振り返った久保は「アルゼンチンも最初にサウジアラビアに負けて、僕らのバスの中で『アルゼンチン終わったな』という何人かで話をしていたけど、その中での優勝だった」と切り出し、「それこそ何人かの選手からLINEで『アルゼンチン負けてるし、最後に勝てばいいんだよ』という話ももらった」とイラク戦後のエピソードを明かした。
メッセージを送った選手については「言うと記事になるので秘密で」とかわしたが、その捉え方には久保も同調。その上で「かといってアルゼンチンみたいに全部がうまくいくとは思わないほうがいい」と警鐘も鳴らしつつ、ここからの戦いぶりに必要なことを次のように語った。
「アルゼンチンもグループを苦しんで上がっていたし、交代で出たような選手たちが活躍して、彼らは一気にビッグクラブに駆け上がっていったけど、そういった選手たちが出てくることを個人的にも願いながら……」
アルゼンチンではサウジアラビアに敗れた後、若手のMFアレクシス・マック・アリスター(リバプール)、MFエンソ・フェルナンデス(チェルシー)、FWユリアン・アルバレス(マンチェスター・C)が次々に台頭。結果につながる活躍を見せていたが、日本代表でも新たなヒーローが出てくることを期待していた。
また自身の活躍への思いも忘れてはいない。「あとは僕は次にチャンスをもらえれば、しっかり前回の反省を活かして自分ができる最大限のことをしたい。特にゲームメークのところを力を入れて、僕の力で押し込んでいきたいと思う」。イラク戦では61分間プレーしたが、トップ下を担った前半は攻撃が停滞。試合後は「僕の責任もある」と述べていたが、自身のプレーも改善していくつもりだ。
「前回の試合は個人的に反省していて、もっと僕がボールを受けてチャンスを作るべきだなと思っていた。次に出ることがあれば、前半15分は無理やり下がってでもボールを受けて、(昨年11月の)シリア戦や(同9月の)トルコ戦みたいに、いろんなことをやりながらチーム全体を押し上げていきたい」(久保)
イラク戦の黒星を受け、ファンの間には悲観的なムードも漂っている状況。しかし、この日の久保の表情は終始、晴れやかだった。
前日の取材対応では、今大会にトレーニングパートナーで帯同している19歳のDF本間ジャスティン(神戸)が日本代表のムードメーカーに久保の名前を挙げていたが、久保は練習中から周囲に積極的に声を掛け、明るく振る舞う様子が目立っている。
久保自身、ムードメーカーという役割には「盛り上げ役というかうるさいだけ。僕よりも良い意味でうるさかった長友選手が抜けたことで僕のうるささが目立っているだけなのかなと思う」と冗談まじりに首を振る。それでも敗戦からの切り替えが求められるチームにおいて、活気を与える存在になっているのは間違いない。
そんな久保は現在のチームの雰囲気について次のように語った。
「このチームは幸い、雰囲気が悪くなることはあまりない。負けていても自信はあるし、過信はない。負けはしっかり反省しつつ、僕たちはいま1敗したけど10連勝してきていて、強いチームであることは間違いないと思う」。アルゼンチンもカタールW杯前は36戦無敗で本大会に臨んでいたが、大会に向けた流れという意味でも共通点はありそうだ。
その強さはまず、24日のインドネシア戦で示すほかない。「対策されたら強いチームが負けることもあるけど、このチームの目標は全勝じゃなくて、アジアカップ優勝すること。まずはグループリーグの最後、インドネシア戦にいい準備をして、しっかり勝って、グループリーグを突破したい」。世界王者のように敗戦から立ち直り、アジア王者への道を切り開く。
(取材・文 竹内達也)
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