(CNN) 米ジョージア州アトランタで27日夜に実施されるバイデン大統領(81)とトランプ前大統領(78)の対決は、米国の歴史上最も重要な討論会になる可能性が高い。
史上初めて、現職と前大統領が膨大な視聴者の前で論戦を繰り広げる。開催時期は通常より大幅に早く、党大会よりも前の時期となる。CNN主催の討論会は拮抗(きっこう)する選挙戦でこれまでに訪れた最重要局面であり、バイデン氏にとっては再選に向けてこ入れを図る最大のチャンスとなる。バイデン氏は政治的、経済的に正常な状態をもたらすとの2020年の公約を達成したと有権者に納得させることに苦慮しており、選挙で敗れる大きな危機にある。
今回の討論会の重要性は、前例のない現在の政局を背景に据えることで初めて完全に理解される。1960年大統領選で当時のジョン・F・ケネディ上院議員とニクソン副大統領が初めてテレビ討論会に臨んで以降、米国では国の岐路となる接戦が何度も繰り広げられてきた。
ただ、今回の討論会の重要性はかつてなく大きい。トランプ氏は20年の選挙で不正があったとの虚偽の主張をもとに平和的な政権移行の妨害を図ったほか、11月に勝利すれば私怨を晴らす前代未聞の大統領任期にすると公言しているためだ。
もし04年にケリー上院議員がジョージ・W・ブッシュ大統領を破るか、12年にロムニー元マサチューセッツ州知事がオバマ大統領の再選を阻んでいれば、大きな政治的変化が生まれていただろう。ただ、その場合でも米国のあり方や対外姿勢は根本的には変わらなかったとみられる。
今回の選挙に関しては、自信をもってそう断言することはできない。大統領はほぼ無限の権力を持つとの最高裁での主張、それに強硬な移民・経済・外交政策の構想に象徴されるトランプ氏の強権主義的な衝動を踏まえると、2期目となれば大きな混乱が起きる可能性がある。
大統領史を専門とする歴史家ダグラス・ブリンクリー氏は26日、CNNに対し、「信じられないほど歴史的。今回の討論会の重要性はいくら強調しても足りない」との見方を示した。
民主党内では、年齢が不安視される81歳のバイデン氏に活力と鋭敏さを示してほしいと切実に望む声が上がっている。78歳のトランプ氏の最大の弱みは自分自身かもしれない。精神的に大統領に不適格とのバイデン氏の警告の正当性を示す出来に終わる可能性もある。
バイデン氏は世論調査でトランプ氏に勝る数少ない分野である人工妊娠中絶や、外国の独裁者に対するトランプ氏の尊敬の念を攻撃材料とする見通し。一方のトランプ氏は既に、バイデン政権下の米国を制御不能な移民や犯罪の横行、経済不況に見舞われたディストピア(暗黒世界)として描く考えを示唆している。
最も異例なのは、トランプ氏がニューヨーク州で口止め料支払い事件の有罪評決を受けてから1カ月も経たないタイミングで討論会が実施される点だ。バイデン氏は早くも選挙戦で有罪評決に言及しているが、トランプ氏の側では、自分は選挙干渉を目的とした司法制度の武器化の被害者だと主張している。
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