東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の新会長について、橋本聖子五輪担当相(56)が組織委からの就任要請を受諾した。18日、複数の関係者の話で明らかになった。女性蔑視発言の責任を取って会長を辞任した森喜朗氏(83)の後任は、逆風の中で数々の難題に取り組むため、「火中の栗を拾うようなもの」。難色を示していたとされる橋本氏が「覚悟」を決めた理由とは。
東京五輪開幕まで約5カ月。組織委トップの辞任という緊急事態にかじ取りを託されたのは、「橋本さんしかいない」と言われた本命だった。夏冬計7回五輪に出場したアスリートとしての実績、五輪担当相や日本オリンピック委員会(JOC)副会長を歴任した組織の運営経験や大会準備への理解度……。組織委の候補者検討委員会が新会長の資質として求めた五つの条件を、橋本氏はすべて満たしていた。
女性を登用することは、森氏の女性蔑視発言による傷ついた日本のイメージ回復につながると期待されるが、二の足を踏む懸念材料もあった。その一つが7年前のスキャンダルだ。橋本氏は日本スケート連盟会長だった2014年、フィギュアスケートの男子選手にキスを強要したと週刊誌で報じられた。当時は「強制した事実はない」と釈明したものの、橋本氏が後任候補に浮上した際、英BBC記者がこの問題をツイッターに投稿。18日は週刊文春が再び報じるなど、世間の目にさらされた。さらに会長に就任するためには公益法人の役員との兼職を禁止する大臣規範で、五輪担当相の辞任を求められるなど会長就任へのハードルは低くなかった。
関係者によると、当初は難色を示していた橋本氏が決断したのは、「頼まれたら断らない」という性格にある。最後はあらゆるルートを使った説得を受け、覚悟を決めた。
これまでも逆風の中で「誰も引き受けたがらない」要職を担い、組織運営に尽力してきた。最初は2006年の日本スケート連盟の会長就任だ。不正経理問題で元会長が逮捕されるなど混乱をきたしていたスケート連盟の再建を図った。13年には暴力や助成金の不正受給問題に揺れる全日本柔道連盟の外部理事を務めた。夏の自転車と冬のスピードスケートを両立した「鉄人」として、難題と向き合ってきた。
12年ロンドン五輪は陸上のセバスチャン・コー氏、24年パリ五輪はカヌーのトニー・エスタンゲ氏など、最近の大会組織委会長は五輪メダリストのアスリート出身者が務める傾向にあった。新型コロナウイルス対策で国との連携も不可欠で、政府関係者は「橋本氏は政治家でオリンピアン。IOC(国際オリンピック委員会)との関係も考えると他にはいない」と評価する。
今後は世界中に広がる新型コロナウイルスの感染状況を踏まえた上での大会開催可否の判断、17日に島根県から中止検討の声も上がった聖火リレーの運営、海外からの受け入れを含めた観客の取り扱いの決定など解決すべき課題をどうさばくか注目される。【松本晃】
からの記事と詳細 ( 2 火中の栗を拾った橋本聖子氏の「覚悟」 組織委会長、当初は難色 - 毎日新聞 )
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