ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油など資源価格の一段の上昇を受けて、日本銀行の黒田東彦総裁は来年4月の任期満了までに、望まない形で物価が目標の2%に到達する姿を目の当たりにする可能性が高まっている。
SMBC日興証券は先週、燃料油価格の激変緩和対策の継続がなければ、消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は、携帯電話通信料の値下げ効果が剥落する4月に前年比2.4%程度に高まるとの見方を示した。バークレイズ証券は原油価格が1バレル=150ドルで定着する場合、2022年のコアCPIは2.8%に達すると試算した。
資源輸入国の日本では原油高は家計の実質所得や企業収益の減少を通じて経済の下押しにつながり、持続的な2%程度の物価上昇を目指す日銀にはむしろ逆風となる。欧州中央銀行(ECB)が先週、 資産買い入れの縮小ペース加速を決め、米連邦公開市場委員会(FOMC)も15、16日の会合で18年以来の 利上げに踏み切る見込みなのとは対照的に、日銀は17、18日の金融政策決定会合で政策を据え置く見通しだ。
ブルームバーグのエコノミスト調査では、過半数が年内の日銀の政策変更を予想していない。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは、ロシアのウクライナ侵攻で景気が悪化する可能性があるとし、日銀は物価が2%に達しても「目標が達成されたと勝利宣言する公算は低そうだ」とみる。
ウクライナ侵攻は日銀緩和の長期化要因、物価高で景気圧迫-サーベイ
黒田総裁は8日の 参院財政金融委員会で、賃金の上昇を伴わないコストプッシュ型の物価上昇は景気に悪影響を及ぼすと述べ、2%の物価目標の持続的で安定的な実現にはつながらないとの見解を示した。
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは、「物価高を受けて消費は落ち込むだろう」と指摘する。日本の賃金上昇率は0.5%程度にとどまるため、「米国のように物価が7%上がらなくてもショックとなる」とみている。
今夏に参議院選挙を控える岸田文雄首相にとって、経済の立て直しは重要なテーマだ。公明党の山口那津男代表は12日の党会合で、ガソリン税を一時的に下げる「トリガー条項」の凍結解除が必要だと述べるとともに、物価上昇の影響緩和のためにも「政府は新たな経済対策を含めた対策を検討すべきだ」と主張した。
円安進行
ドル・円相場は14日、17年1月以来となる1ドル=118円台を付けた。金融政策の正常化を進める欧米の中央銀行と日銀との方向性の違いが鮮明になればなるほど、内外金利差の拡大を意識した円安が進行し、一段と物価上昇圧力を強めるという負の連鎖につながりやすい。
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、円安が一段と進んでコモディティー価格高の国内経済への悪影響が増幅していけば、「日銀の政策スタンスへの疑問の声は強まっていく可能性がある」との見方を示す。
ソニーフィナンシャルホールディングスの菅野雅明チーフエコノミストは、ウクライナ侵攻を戦後最大の出来事の一つと位置付け、「日本経済にも非常に大きな、長期的な影響を与え得る」と指摘。日本人の物価観が変化する可能性も否定できないとし、「その場合、日銀は正常化をしなければならず、金融緩和の継続が前提となっている膨大な公的債務や住宅ローンなどに深刻な問題が起こる」と警鐘を鳴らした。
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