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気候もようやく暖かくなり、もうすぐゴールデンウィークですね。なかなか自由に外出ができない昨今ではありますが、みなさん連休はなにかご予定立てていらっしゃいますか? 今回は、旅に欠かせない場所でもあるホテルにまつわる、最近私が手がけたお仕事についてご紹介できればと思います。
実はこのたび、初めてホテルのユニホームデザインをさせていただきました。それは本日(4月22日)大阪にオープンした「OMO7(おもせぶん)大阪 by 星野リゾート」のスタッフユニホームです。
この依頼を受けたのは昨年の春。それは、コロナ禍で日本中が少し元気を失っている、まさにそんな時でした。ステイホームが常識となる中、新たなホテルの誕生は純粋に心が躍るニュースで、そこに自分もたずさわれる、しかも、長年の夢であったユニホームデザインのお仕事ということで、やります!のお返事以外、私の中にはありませんでした。
とはいえ、初めてのチャレンジ、またとても大きなプロジェクトだったので、2020年に夫と立ち上げたデザイン会社「STUDEO」で挑むことに。オリエンテーションでは、カジュアルや安心感、上質、独自性といった、新ユニホームについていくつかのキーワードをいただいたのですが、そこからすぐデザインを考えるのではなく、まずは何度もヒアリングを重ね、独自のサービスを展開するこのホテルがどう位置づけられるか、 ポジショニングすることから始めました。
そして、そこから浮かび上がってきたポイントをもとにコンセプトを導き出し、デザインへと落とし込んでいったのです。
星野リゾートさんが展開するこのOMO(おも)というブランドは、地域と一体となり街を楽しみ尽くす旅を追求した都市観光ホテルで、全ての施設で街歩きをサポートする 「Go-KINJO(ごーきんじょ)」といった、その土地をより深く楽しむためのさまざまなサービスが用意されています。そしてもちろん、新設のOMO7大阪でも、ガイドツアーをはじめとする街を楽しむ独自のサービスが提供されています。
このOMOならではのユニークなサービスを可視化したもの、それを今回ユニホームのキーデザインにしました。
最近はオンライン上のマップが主流となり、そこからも着想を得ています。テキスタイルを地図に見立て、行きたいところや気に入った場所へピンを立てていくイメージで、ホテルのサービスを通じて、街の中に自分だけのお気に入りスポットをどんどんと見つけてほしいという願いから、ピンをアイコンにしました。
そして、それを普遍的な意匠であるドット柄と掛け合わせ、ポップさがありながら、着用されるスタッフの方はもちろん、お客さまへも安心感を与えられるようなデザインに仕上げてゆきました。こうしてできたピンの模様、私たちは愛着を込めて「OMO PIN DOT(オモピンドット)」と呼んでいて、それを生地に取り入れユニホームへと展開しています。
またそのアイデアから派生し、ホテルの住所が記載された吹き出し型のマグネットバッジも作製しました。これは今回製作したバッグや帽子を含む全アイテムに取り付けが可能で、ユニホームの重要なアイテムのひとつになっています。ここには、ホテル自体がお客さまのお気に入りの場所となり、街の象徴として地域に根づいてほしいという思いも込められています。
今回のユニホームは全てのアイテムを完全オリジナルで作製し、デザインだけでなく製作の進行管理に至るまで自分たちで請け負いました。その際、多大なご協力をいただいたのが、以前より製作のアドバイスをいただきお仕事もご一緒している縫製工場「都ドレス」の松本聖子さんです。
松本さんには初期の段階からユニホームのデザインチームに入っていただき、特に型出しや素材選び、縫製においてさまざまな助言をいただきました。マーキングという服の型を生地に配置する工程で、極力残布が出ないような工夫を施したこと。また、伸縮性の高い素材を使っているため、サイズ展開を男女合わせて4サイズと抑えて過剰生産を回避するなど、持続可能性に配慮し取り組めたことも、こうして松本さん、縫製工場さんとタッグを組んだからこそできたのだと思います。
ユニホームなので、長く着回せ、また家庭洗濯にも対応できるようメンテナンス性も重視し、スポーツウェアに使用されるような素材を取り入れたのもポイントです。取り扱い・着用の両面で、使いやすいアイテムにすることは困難も多かったのですが、工場へ足を運び、その一点一点が形となってゆく過程を見た時、そうしたさまざまな困難は自然と喜びへと変わりました。
もちろん、着用して働くスタッフの方々のことを第一に考え、着る人の世代や性別を問わないスタイルであること、また、動きやすいゴムのパンツ、可動に適したストレッチ素材のジャケットなど、細部への気配りも絶やさぬよう心がけました。
こうして完成したユニホームたち。今回はそのデザイン・生産だけにとどまらず、このユニホームを通してOMO7大阪のさらなる魅力を発信できればと、グラフィックも制作させていただきました。
こちらも新たにクリエーティブチームを作り取り組んだのですが、ユニホームが形となり、そのコンセプトや世界観をもう一歩深く知っていただくツールになったのではと思っています。デザイン会社として、この一連のプロジェクトを成し遂げることができたことは、私にとって大変意味のあるかけがえのない経験となりました。
まだまだ遠出は難しく感じることもありますが、決して遠くへ行かずとも、まだ知らない街の魅力はあなたの周りにもきっとあるはず。旅行の計画を立てるだけでもワクワクしますよね。私もアイデアを見つける旅へ出かける日を楽しみにしています。もし、今回ご紹介させていただいたホテルを利用する機会がある方は、滞在を楽しみ、サービスを満喫しつつ、それを提供してくださるスタッフさんのユニホームにもちょっと目を向けていただけると幸いです。
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からの記事と詳細 ( コンセプトが形になる喜び。「ピン」のデザインに込めた思いとは - 朝日新聞デジタル )
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